P-I-A-2
Ebstein奇形を合併し非免疫性胎児水腫と診断したDown症候群の 1 例
滋賀医科大学小児科1),京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学2)
安田紀子1),神谷 博1),白井丈晶1),渡邊格子1),藤野英俊1),中川雅生1),藤本一途2),問田千晶2)

【はじめに】先天性心疾患は非免疫性胎児水腫の原因の一つであり,胎児エコーにより出生前に診断をされる例が多い.今回われわれは妊娠中期にEbstein奇形に伴う胎児水腫と診断され,出生後に汎血球減少を認めたDown症候群の 1 例を経験したので報告する.【症例】母体は妊娠27週より胎児水腫を指摘され当院産婦人科を紹介された.胎児エコーでは軽度の心嚢液と皮下水腫,および大量の腹水を認めた.心臓はCTAR 73%で,右房は著明に拡大し,三尖弁中隔尖の付着部位は心尖部と僧帽弁輪のほぼ中間で重度の三尖弁閉鎖不全がみられた.以上よりEbstein奇形による心不全,胎児水腫と診断した.胎児水腫が徐々に増悪したため生後直ちに外科的治療が必要な場合を考慮し,妊娠30週 5 日に京都府立医科大学へ母体搬送したが,胎児仮死徴候が認められ同日に緊急帝王切開となった.患児は生下時体重2,024g,Apgar scoreは 1 分後 2 点,5 分後 6 点で全身の浮腫が著明であった.胸部単純写真では心拡大(CTR 65%)および大量の胸腹水を認めた.心エコーでは心嚢液の軽度貯留,右心系の拡大,心房中隔欠損および小さい心室中隔欠損,重度の三尖弁閉鎖不全を認めた.三尖弁は異形性弁であったがplasteringは軽度で,肺動脈への順行性血流は十分保たれ,血行動態的には心不全は軽度と考えられた.血液検査ではHb 5.6g/dl,血小板79,000/μl,白血球1,600/μlと汎血球減少を認めた.輸血や腎不全に対する内科的治療で浮腫は改善し,外科治療を含む循環管理はほとんど必要としなかった.なお,染色体検査では21 trisomyであった.【結語】本症例は,検査結果および臨床経過から強度の貧血による非免疫性胎児水腫と考えられる.心疾患を伴う胎児水腫では他の原因も考慮しつつ胎児エコー診断をする必要があると考えられた.

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