P-I-A-4
胎児の重症肺動脈弁狭窄症とEbstein奇形による重症三尖弁閉鎖不全の合併症例における胎児期血行動態の評価
聖マリア病院新生児科1),久留米大学医学部小児科2)
籠手田雄介1),前野泰樹2),姫野和家子2),廣瀬彰子2),江上公康2),古井 潤2),石井正浩2),赤木禎治2),松石豊次郎2)

心室中隔欠損症を伴わない右心室流出路閉塞性疾患(RVOTO)と重症の三尖弁閉鎖不全(TR)との合併はよく経験する.しかしこの時Ebstein奇形のような重症のTRを主体とするのか,重症RVOTOが主たる病態か不明瞭なことも多い.今回,上記の血行動態を示し胎児期から経過を観察できた症例において胎児期の血行動態の変化を観察した.【症例】在胎28週に心拡大とTRを指摘され胎児心エコー外来に紹介された.右心房の著明な拡大を伴う重症TRがあり三尖弁の中隔尖に軽度のplasteringを認めEbstein奇形があると判定.肺動脈への順行性の血流は認めなかったが,TR流速からの右室圧の推定は65mmHgであるためRVOTOが器質的であり純型肺動脈閉鎖にTRを伴う病態との鑑別が困難であった.胎児水腫は認めなかった.経過中,右室推定圧は在胎30週に75mmHg,32週に83mmHg,36週に87mmHgと次第に上昇.一方34週から肺動脈弁をわずかに通過する血流が確認され重症肺動脈弁狭窄症と診断した.在胎37週 4 日2,934gにて出生.胎児水腫はなく全身状態は良好.心エコーでは軽度のplasteringがあり軽度のEbstein奇形はあると判断した.PGE1にて動脈管を維持し,7 生日と12生日にballoon肺動脈弁形成術を施行,RVOTOの圧格差20mmHgまで改善.SpO2は退院時93%,2 週間後に100%となり,TRは中等度となった.【結語】三尖弁の形態はEbstein奇形であり著明なTRを認めた症例の中にも,胎児期に次第に右室圧は上昇し,肺動脈への順行性の血流を保てる状態となる症例がいることを経験した.今回右室圧が著しく低下している状態は確認できなかったが,本症例のように重症RVOTOに重度のTRが合併し十分な右室の容量がある症例の中には,胎児期に一旦右室圧が低下してRVOTOが進行し,その後に次第にRV圧が上昇してくる病態がある可能性が示唆された.

閉じる