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生後 4 時間で手術を施行し補助循環の後救命しえた共通肺静脈閉鎖症の 1 例
あいち小児保健医療総合センター心臓血管外科1),あいち小児保健医療総合センター循環器科2)
佐々木滋1),前田正信1),岩瀬仁一1),水野明宏1),安田東始哲2),福見大地2),小島奈美子2),長嶋正實2)

【はじめに】共通肺静脈閉鎖症は肺うっ血が高度に進行し病態が急速に悪化するため手術成績も不良で死亡率も高い疾患である.今回われわれは生後 4 時間強で手術を開始し,術後補助循環を施行し救命しえた症例を経験した.【症例】患児は在胎37週 5 日で他院にて出生.生直後より呼吸困難強く経皮的酸素飽和度も60%台で挿管の上生後 2 時間で当院へ到着した.胸部X線写真上高度の肺うっ血を認め,心エコーにて左房の背側に共通肺静脈腔を確認,垂直静脈は同定しえず上行大動脈のflowは動脈管からの逆行性が主体であり,十分な左心室からのout putが得られていないことが示唆された.以上より肺静脈閉鎖で肺静脈のうっ滞が急速に進行していると診断.生後 4 時間45分後に手術を開始した.胸骨正中切開の後直ちに体外循環を確立し肺動脈ventを挿入,早期に肺静脈血流のうっ滞軽減を図った.心停止を得た後心臓内を検索,共通肺静脈腔が左房の背側に確認されたが垂直静脈は存在せず共通肺静脈閉鎖であった.手術は共通肺静脈腔を左房へ吻合することで肺静脈血還流を修復.大動脈遮断時間 1 時間13分であり大動脈遮断解除後も人工心肺離脱まで 3 時間30分の補助循環を要した.しかし術前からの肺うっ血による肺機能の著しい低下,左心室特に後壁の壁運動の低下などで有効な体循環が得られず,術後12時間15分でVA bypassによる補助循環を施行した.その後徐々に肺機能と左心機能の回復が得られ,67時間後に補助循環を離脱した.【考察】共通肺静脈閉鎖症の治療において,早期の診断と手術の開始・肺静脈圧の軽減が極めて重要である.同時に高度の肺うっ血による肺機能低下と,生直後で左心室の駆出容量が低下している術前状態での開心術施行による術後の左心機能低下に対して,容量負荷の変化にadaptationするまでの間の補助循環が有効であることが改めて示された.

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