P-I-A-9
新生児期に発症した肺動脈弁欠損の 3 治験例
県立岐阜病院小児循環器科1),県立岐阜病院小児心臓外科2)
桑原直樹1),後藤浩子1),安達真也1),桑原尚志1),滝口 信2),八島正文2),竹内敬昌2)

【背景】肺動脈弁欠損の中には,乳幼時期まで根治手術を待機できる軽症型と,出生直後より重篤な呼吸不全を呈する重症型とが存在する.本疾患ではファロー四徴症(TOF)を合併することが多いが,まれに他の心疾患の合併も報告されている.当科で経験した新生児期発症肺動脈弁欠損の 3 例について気道病変の有無,合併疾患,治療経過について後方視的に検討した.【症例】症例 1 はTOFを合併.出生直後よりチアノーゼ,呼吸困難を認め直ちに人工呼吸管理となった.気胸,肺気腫を合併しており,気管支鏡にて気管支の拍動性狭窄を認めた.心エコーでは拡張した肺動脈と痕跡程度の肺動脈弁を認め,高度の肺動脈弁逆流を認めた.生後12日,肺動脈絞扼術および左BTシャントを行った後,1 歳時に心内修復術および肺動脈縫縮術を施行.術後も気道狭窄の残存を認め長期間の人工呼吸管理を必要とした.症例 2 はTOF,22q11.2欠失,DiGeorge症候群を合併.症例 1 と同様,出生直後よりチアノーゼ,呼吸困難を認め肺気腫を合併していた.生後26日,心内修復術および肺動脈縫縮術を施行したが,術後 2 日に永眠.症例 3 は右室低形成を伴う三尖弁膜様閉鎖を合併.生後 2 日,気道狭窄症状は認めなかったが,著しいチアノーゼを認めたため搬送入院となった.動脈管閉鎖によりチアノーゼが増強したためlipo-PGE1の投与を開始し,生後 1 カ月時に左BTシャント,11カ月時にBDG手術,2 歳時にTCPCおよび右室流出路離断術を施行した.【まとめ】まれな新生児期発症肺動脈弁欠損の 3 治験例を報告した.治療方針決定にあたっては,気道狭窄,合併心疾患の検討が重要である.新生児期より呼吸困難を呈する最重症例では末梢の肺動脈の発育不良に加え,気道系の狭窄を認め治療が困難な症例が存在した.

閉じる