P-I-A-10
動脈管閉鎖術を施行された新生児におけるBNP値の変化
県立岐阜病院新生児センター
長澤宏幸

【目的】BNPは心不全を定量的に評価する指標として小児,成人を問わず広く計測されている.早期新生児期において心疾患を有しない新生児において最も問題となる循環器疾患は動脈管開存である.動脈管開存に対してはインドメサシン投与が第一選択であるが,頭蓋内出血などによりインドメサシンを投与できない心不全症例では動脈管閉鎖術を施行せざるをえない.今回,動脈管閉鎖術前後におけるBNP値の変化を測定し,閉鎖術後の心不全の改善経過を観測した.【対象および方法】動脈管開存による心不全新生児症例で出血傾向,乏尿などによりインドメサシンを投与できず,手術によって閉鎖せざるをえなかった 7 例である.動脈ラインより採血した血液を型通りの方法で血漿分離し計測した.測定は,手術前,12時間後,24時間後,2 日後,4 日後,7 日後,9 日後以降とした.症例の出生体重(平均および標準偏差,以下同様)は1,307±408g,在胎週数は,30.1±3.8週,手術時日齢は,13±21日(中央値 3 日)であった.【結果】BNP値(pg/ml)を対数換算した値で,手術前は3.28±0.59,手術後12時間では,2.60±0.76,手術後24時間では,2.25±0.55,手術後 2 日では,2.08±0.39,手術後 4 日では,1.72±0.78,手術後 7 日では,1.66±0.50,手術後 9 日以降では,0.82±0.49であった.【結論】BNP値は手術後24時間で約10分の 1 にまで低下するが,その後しばらくは高値が持続し,手術後 7 日でも正常値には達せず,正常値に至るのは 1 週間以上かかることがわかった.【考察】低出生体重児において動脈管開存における心不全の影響は比較的長く残存すると考えられた.

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