P-I-A-15
新生児期に診断され一期的根治術を施行した一側肺動脈欠損の 1 例
群馬県立小児医療センター循環器科1),群馬県立小児医療センター心臓血管外科2),群馬県済生会前橋病院小児科3)
小林 徹1),鈴木尊裕1),金井貴志1),小林富男1),村上 淳2),鈴木政夫2),篠原 真3)

【はじめに】一側肺動脈欠損は非常にまれな先天性心疾患であり,新生児期に診断され治療が行われた報告はない.われわれは新生児期に一側肺動脈欠損と診断し一期的根治術を施行した症例を経験したため報告する.【症例】日齢 0,男児.在胎41週 5 日4,018gにて出生.Apgar score 9-9.出生直後からチアノーゼ,多呼吸を認め新生児一過性多呼吸の診断で紹介入院となった.入院時の心エコーでは主肺動脈より左肺動脈,左側動脈管の分岐は認めたが,右肺動脈への分岐が確認できなかった.また右腕頭動脈から右肺動脈に向かう右側動脈管と思われる連続性の血流をわずかに認めた.一側肺動脈欠損と診断し右側動脈管の開存を目的にlipo PGE1投与を行ったが右側動脈管は日齢 1 に閉鎖し再開通しなかった.lipo PGE1投与中止し,酸素投与で内科管理施行後,日齢22に心臓カテーテル検査を行った.右側動脈管は盲端となって閉鎖していたが,右肺静脈wedge angiographyで右肺動脈の存在を確認したため,日齢36に右肺動脈再建術(主肺動脈前壁を右肺動脈の後壁とし有茎自己心膜パッチにて前壁を形成)を施行した.術後経過は順調であったが右肺動脈の吻合部狭窄を認めたため,2 カ月,6 カ月,1 歳 2 カ月時の計 3 回バルーン拡張術を施行した.肺血流シンチグラムでは右上葉の血流低下は認めたが,右/左カウント比は0.9%(手術前),28.0%(術後 1 カ月),63.0%(術後 1 歳 1 カ月)と増加してきており右肺血管床が発達していると考えられた.【結語】新生児期に診断した一側肺動脈欠損症例に対し一期的根治術を施行した.その後定期的にバルーン拡張術を行うことにより右肺血管床を発達させることができた.

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