P-I-B-1
カテーテルアブレーションにより改善した多発性心房頻拍に伴う頻拍誘発性心筋症の 1 例
沼津市立病院小児科1),日本大学医学部小児科2)
谷口和夫1),村林督夫1),宇佐美等1),梁 茂雄1),金丸 浩2),宮下理夫2),鮎沢 衛2),唐澤賢祐2),住友直方2),原田研介2)

【目的】比較的短期間で発症した頻拍性誘発性心筋症に対してカテーテル・アブレーション(RF)を行い,その有効性と心機能の経過を検討した.【症例】7 歳,男児.既往歴,家族歴に特記すべき事項はない.5 歳時に脈の不整を主訴に当院へ紹介された.Holter心電図で上室性期外収縮(PAC)と非持続性の変更伝導を伴う心房頻拍(AT)を認めた.頻拍は最高 4 連発で持続時間も短く,心エコーで心機能に異常がないため,外来で経過観察していた.7 歳時,胸部X線写真では心拡大はみられなかったが,心エコーでは左室拡張末期径(LVDd)の拡大と僧帽弁逆流(MR)を認め,運動負荷で負荷後にATが増加した.心房頻拍に伴う頻拍誘発性心筋症と診断し電気生理学的検査(EPS)およびRFを行った.安静時にPACは多発していたが,プログラム刺激で頻拍は誘発されなかった.PACはATP 7mgの静注で抑制されなかった.CARTO systemを用いPACのactivation mappingを作成したところ右房後壁に最早期心房興奮部位を認めた.心腔内心電図では,同部位は体表面心電図のP波から約30msec先行しており,78msec持続するfragmentationも認めた.同部位に60℃で通電したところ 1 回目の通電でPACは消失した.fragmentationの検出部位にさらに通電を追加し,同電位が消失したのを確認しRFを終了した.RF後,期外収縮はみられず心機能,LVDdの改善に伴いMRも改善した.また,術前上昇していたhANP,BNPも低下した.【結論】頻拍誘発性心筋症は不整脈の治療で改善する.心房性期外収縮で発見され,初期には治療を行わなかったが,非持続性の心房頻拍例でも心機能低下を来す頻拍誘発性心筋症を呈する症例があり,注意が必要である.このような症例にはRFが有効な治療法と考えられる.

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