P-I-B-4
先天性完全房室ブロック例の臨床的検討
長崎大学医学部小児科
西岡桃子,大坪善数,岡崎 覚,山本浩一,本村秀樹,手島秀剛,宮副初司,森内浩幸

【はじめに】心奇形を伴わない孤立性先天性完全房室ブロック(以下CCAVB)はまれな疾患であるが,臨床経過に幅がある.そのために治療・経過観察には,将来を見据えて適正な判断が要求される.胎児~新生児期に心不全を起こす例では早期にペースメーカの適応となるが,伝導系の上位でのブロックの場合は,下位伝導路の自動能により無症状で小児期を過ぎることが多い.しかし後者の例でも成人期では加齢とともに徐脈が進行し,Stokes-Adams発作の出現,またまれに突然死を起こすこともある.今回当科で経過観察中のCCAVB例について,これまでの臨床経過や現在の心機能,その他について検討したので報告する.【症例】現在 4~23歳の 5 例で,4 例は周生期に発見されていた.うち 2 例は,新生児期に一時的ペースメーカを経て,1 例は乳児期にそれぞれ恒久的ペースメーカを留置した.残り 2 例は現在まで無症状で心拍数も確保されているため無治療で経過観察している.ペースメーカ留置群は 3 例とも心外膜ペーシングで設定モードはVVIである.1 例に,拡張型心筋症を発症,他の1例に洞機能の低下が示唆されている.また非留置群では 1 例に慢性の心房細動を認めている.また今回各症例のECG,心エコー,神経体液性因子値と現状態との関連も併せて検討した.【考察】わずか 5 症例であるが,非常に多彩な経過を辿りうることが確認された.経過観察中の死亡例はなく,現在まで生命予後は良好である.しかし現状では両群とも心房心室非同期であり,長期にわたる高い心房の容量・圧負荷の影響と思われる心房刺激伝導系の障害が 2 例に示唆され,また拡張期流入血液量の減少が,心機能に与える影響も認められた.今後さらに長期的には循環器的問題点の発生も考えられ,生理的ペーシングの適応,移行の時期も含め慎重に検討する必要があると思われた.

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