P-I-B-5
先天性完全房室ブロックの 5 例―拡張型心筋症を続発した極低出生体重児の 1 例を中心に―
琉球大学医学部小児科
砂川 信,島袋忠雄

【はじめに】先天性完全房室ブロック(C-CAVB)における永久的右室ペースメーカ埋め込み術(PMI)後の左心機能障害(拡張型心筋症;DCM様病態)の報告が散見される.【症例】先天性完全房室ブロックを 5 例を経験した.4 例は母体の抗SS-A抗体が陽性であった.在胎週数は30週 2 日~40週 1 日,出生体重は1,240~3,858g,出生時の心室拍数は30~70/分であった.2 例は内科的治療のみで観察可能,3 例は一時的ペーシング治療を行い,そのうち 2 例は待機的に永久的PMI(VVI)を行った.PMI未施行の 3 例(現在 1 歳 6 カ月,2 歳 6 カ月,5 歳 7 カ月)は,心拍数50~60/分,心拡大を認めるものの心不全症状はなく,現在経過観察中である.PMI施行例の 1 例は母親が前期破水にて入院した際にC-CAVBを指摘され,在胎32週 2 日,帝王切開にて1,240gで出生した.出生後β刺激剤投与にても心拍数50/分台で,心不全症状を認めたため,体外式一時的ペーシング治療を開始した.経過中ペーシング不全,カテーテル感染などで計14回の体外式ペースメーカ入れ替えを施行,4 カ月,体重 3kgで永久的PMIを施行した.3 歳 2 カ月ペースメーカ交換,その後中等度の僧帽弁閉鎖不全を伴ったDCMを続発し,塩酸イミダプリルを開始,現在心房同期性の左室または両室ペーシング治療を考慮中である.PMI施行例のもう 1 例はその他の原因で死亡.【考察】右室ペーシング後に左心機能障害を来すことが実験的にも,経験的にも報告されており,心室における収縮の時間的不一致が主な原因と考えられている.したがって,C-CAVB症例では,PMI後においても心機能を含め,注意深い観察が必要である.なお,最近成人領域を中心に,収縮のタイミングを一致させることによる心機能改善目的で,DCMを含んだ重症心不全例における両室ペーシングの有効性が報告されており,今後C-CAVB症例においても,続発性DCM症例のみならず,初回PMI時においても両室ペーシングの適応が考慮されるべきである.

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