P-I-B-7
Inappropriate sinus tachycardiaによる新生児期および幼児期心不全
あいち小児保健医療総合センター循環器科1),公立陶生病院小児科2)
安田東始哲1),福見大地1),小島奈美子1),長嶋正實1),浅井俊行2)

【背景】小児のinappropriate sinus tachycardia(IST)の報告は少なく,診断基準も確立されていない.【目的】ISTによる心不全を来した 2 例を示し,その診断と治療について検討すること.【方法】診療記録からの後方視的検討.【対象】(症例 1)在胎37週の男児.胎児頻拍を指摘された.38週,正常分娩にて出生.軽い体動で心拍が上昇,啼泣時や哺乳時には300bpm以上の洞性頻拍を認めるため生後 2 カ月時に入院.胸部X線上CTR 61%,心エコーでEF 43%,HANP 56pg/ml.Holter ECGでは総(beats)/最小(bpm)/最大心拍数(bpm)は,250,000/117/327.propranololを 1mg/kg/dayから3.1mg/kg/dayまで漸増投与し,CTR 60%,EF 67%,HANP 10pg/mlまで改善した.Holter ECGでは総/最小/最大心拍数は,190,000/88/229まで減少した.(症例 2)1 歳 6 カ月健診で心雑音を指摘された男児.肝 1 横指触知,奔馬調律を認めた.心電図は洞性頻脈.CTR 60%,EF 34%.Holter ECGでは総/最小/最大心拍数は,200,000/112/200.4 カ月間propranolol(1mg/kg/day)を投与したが効果なく中止.その後CTRは56%(2.5歳),50%(5.0歳),50%以下(6.9歳)と正常化した.EFは52%(2.1歳),54%(5.7歳)と正常下限で推移した.6 歳時のトレッドミル運動負荷心電図では負荷直後より急速な心拍数の上昇を認めた.【まとめ】胎児期および幼児期のISTによる心不全を経験した.新生児期のISTによる心不全治療において,1 日総心拍(< 200,000/日)が目安になる.ISTに対する小児の診断基準の確立が必要である.

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