P-I-B-8
ファロー四徴症術後心室頻拍の不整脈基質―CARTOを用いた 2 症例の検討―
岩手医科大学附属循環器医療センター内科1),岩手医科大学附属循環器医療センター小児科2),横浜赤十字病院循環器科3),オクラホマ大学4)
籏 義仁1),小山耕太郎2),堀田一彦1),高橋 信2),千田勝一2),平盛勝彦1),野上昭彦3),中川 博4)

ファロー四徴症(TOF)術後遠隔期に,致死的心室性不整脈が出現しうることが報告されている.TOF手術後 2 症例の心室頻拍(VT)に対して,electro-anatomical mapping(CARTO)を用いて不整脈基質の同定と根治術を試みた.【症例 1】41歳の男性.10歳時にTOFに対する心内修復術が施された.23歳時に初めて心電図でVT1(LBBB,LAD,160/min)が確認された.右室のvoltage mapでは右室流出路(RVOT)に広範囲な低電位部(< 0.1mV)と自由壁に 1 つのscarが確認された.プログラム刺激でVT1(LBBB,LAD,TCL = 380ms)の誘発と停止は再現性を持って容易であった.scarと三尖弁輪(TV)間の広範囲でconcealed entrainmentが得られ,post pacing intervalは頻拍周期に一致し,pace mapでも同領域でperfect mapが得られた.VT1はscarを中心に反時計方向に旋回するマクロリエントリ性心室頻拍と判明した.scar-TV間の低電位部に線状焼灼を行いVT1は停止した.その後,TVを旋回路に含むVT2(LBBB,NAD,TCL = 376ms)が誘発された.肺動脈(PA)-TV間に線状焼灼を追加して,VTは誘発されなくなった.【症例 2】30歳の男性.生直後にTOFと診断され,2 歳時に心内修復術が施された.27歳時に血圧低下を伴うVTに対してICD植え込みとアミオダロンの内服が開始された.症例 1 と同様に,RVOTに広範囲な低電位部と自由壁に 1 つのscarが存在していた.血圧低下を伴うVT(LBBB,TCL = 320ms)を繰り返し誘発してactivation mapを得た.VTはscarを中心に反時計方向に旋回するマクロリエントリ性心室頻拍であった.scar-PA間とPA-TV間の低電位部に線状焼灼を行った.その後,VTは誘発されなくなった.【まとめ】手術侵襲によるscarを伴うRVOTの広範な低電位部とTVがVTの不整脈基質の形成に関与していた.CARTOを用いて低電位部とscarを同定することで,心室頻拍の根治術が可能であった.

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