P-I-B-9
ステロイド溶出心筋電極の有用性について
筑波大学臨床医学系循環器外科1),筑波大学臨床医学系小児科2)
野間美緒1),平松祐司1),堀米仁志2),高橋実穂2),村上 卓2),榊原 謙1)

近年,小児に対するペースメーカ治療においては機器の小型化・改良により,従来の心筋電極から電極条件のよい経静脈的アプローチによる心内膜電極に移行する傾向にある.しかし,体格の小ささや成長の観点から,あるいは先天性心疾患術後のアクセス血管の問題等から依然として心筋電極に依存する症例は存在する.当科では2001年から,心筋電極の欠点の一つである高ペーシング閾値への対策としてステロイド溶出心筋電極を用いてきた.【目的】当科で使用しているステロイド溶出心筋電極の有用性について検討する.【対象と方法】1990年~2002年までに当院で小児期にペースメーカ植え込み術を行い,その後も定期的に外来観察可能であった 9 例.全例心筋電極を用いたが,初回植え込みが2001年以前に行われた 5 例をNS群,2001年以降に植え込みを行った 4 例にはステロイド溶出電極を用いておりこれをS群とし,電極条件について比較検討した.【結果】植え込み時平均年齢はNS群59.2カ月,S群3.75カ月,平均観察期間はNS群110カ月に対しS群17カ月といずれも大きな差を認めた.NS群で用いた電極はすべてscrew inタイプで,1 例を除いて胸骨正中切開から右心室前面に固定した.S群では 4 例とも同じステロイド溶出電極(Capsure Epi bipolar 4968-35cm Medtronic)を用い,胸骨正中切開から心室前面に逢着固定した.この電極は形態や大きさ,固定方法などが小児に好適であった.植え込み時のペーシング閾値は,S群のほうが良好な傾向であった.センシング値は両群間に差を認めなかった.N群の 2 例で断線を機に経静脈心内膜電極へ移行した.両群とも観察期間中に電極条件の悪化を認めなかった.【結論】症例数も少なく観察期間も短いが,ステロイド溶出心筋電極はペーシング閾値を低く保つことが可能で,電池消耗を軽減する一助となると考えられた.

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