P-I-B-10
下大静脈起源の心房頻拍と思われる乳児例
福岡大学医学部小児科
森島直美,吉兼由佳子,橋本淳一,濱本邦洋

【はじめに】心房性頻拍症の起源部位として肺静脈や上大静脈の報告は多く見られる.しかし,下大静脈はその解剖学的特徴より心房頻拍の発作起源にはなりにくいと考えられており,また報告もほとんどない.今回われわれは下大静脈起源の心房頻拍と思われる乳児例を経験したので報告する.【症例】2 カ月女児.入院前日より元気なくなり,夜間は不機嫌となり一晩中眠れず.翌朝近医受診,頻拍発作疑いにて紹介入院.来院時,体温36.5℃,心拍数300/分,呼吸数60/分,血圧98/56mmHg.顔色不良,呻吟,あえぎ呼吸を認める.肝 4cm触知,浮腫は認めず.心電図で心拍300/分のnarrow QRSの頻拍を示した.心房頻拍と診断,ATP投与で頻拍発作は停止し,呼吸状態改善,肝腫大消失し心不全は改善した.しかし約 1 時間後再発し,ATPの再投与で頻拍発作は一時的に停止するも,頻回に再発を繰り返した.発作間歇期の時間も次第に短くなったためprocainamideを静注し発作は停止したが,約 1 時間後に再発した.その後ATPの再三の投与とdigoxin急速飽和を開始したが,発作の停止と維持を得ることができなかった.さらにverapamil,propranololを投与したが全く効果がなかったため,pilsicainideの静脈内投与を試みた.0.4mg/kg投与時点で発作は停止した.発作停止後の心エコーで右心房は洞調律で収縮するも下大静脈は300/分での収縮運動を認めた.今まで報告のない下大静脈起源の心房頻拍と思われるので報告する.

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