P-I-B-14
肺高血圧を合併する動脈管開存に対するコイル塞栓術の有効性
神奈川県立こども医療センター循環器科1),島根難病研究所小児循環器科班2),どれみクリニック3),兵庫県立こども病院循環器科4),札幌医科大学小児科5)
上田秀明1, 2),羽根田紀幸2, 3),黒江兼司2, 4),富田 英2, 5),岸田憲二2),野木俊二2),檜垣高史2),古井 潤2),矢野 宏2)

【背景】動脈管開存(PDA)に対するコイル塞栓術は,治療法の第一選択となりつつある.一方肺高血圧を合併するPDAに対するコイル塞栓術に関する報告はまれである.【目的】限定された医療資源下,PDAの治療例についてコイル塞栓術の有効性,肺高血圧の推移,合併症を検討する.【対象と方法】モンゴル国で2001年10月から2003年10月までPDAコイル塞栓術を施行した40例のうち肺高血圧を合併する23例をretrospectiveに検討した.施行時年齢は,0.6~12歳(4.1±3.6歳),体重は3.0~30kg(14±7.0kg).Grifkaらの報告に準じ,原則として0.052’Gianturcoコイルを数個同時に先進させ,順行性,逆行性に留置した.【結果】PDA径,Pp/Ps,Qp/Qsはそれぞれ2.5~8.0mm(4.3±1.4mm),0.30~0.86(0.44±0.17),1.4~10(3.4±2.9).留置したコイル総数は,2~14個(3.6±2.6個).PDA径の 6,8mmの 2 例を除く全例で留置が可能で,1 例を除き全例で完全閉塞を得た.残存短絡は,術後 6 カ月以内に消失した.平均肺動脈圧は,塞栓術前後で32~57mmHg(44±10mmHg)から11~27mmHg(21±5.5mmHg)へと有意な低下を認め(p = 0.0002),全例で肺高血圧は軽快した.溶血例は 1 例で,2 回計14個の追加コイル留置術後,溶血は消失した.コイル脱落例は,回収不能となり結紮術を実施した 1 例を除き,全例回収可能であった.【結語】PDAコイル塞栓術は,肺高血圧を合併するPDA例に対しても高率に安全に実施可能で,短絡を残存させることなく閉塞可能である.数個のコイルを同時に留置するなど手技上の煩雑さや多数のコイルを必要とするなど経済効率の点からも,Amplatzer PDA occluderなど新しいデバイスの使用認可が待たれる.

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