P-I-C-1
乳児における大動脈径に関する検討
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学
田中敏克,藤本一途,吹田ちほ,浅妻右子,河井容子,坂田耕一,白石 公,糸井利幸,濱岡建城

【背景】大動脈低形成を伴う先天性心疾患では,正常児と比較して大動脈径がどの程度小さいのかが治療戦略を検討するうえで重要な要素となる.【目的】乳児における大動脈径を計測し,体表面積(BSA)からの正常予測値を求めること.また,心室中隔欠損(VSD)の児と正常児との比較およびVSDにおける血行動態との関係を検討すること.【対象】当科で心臓カテーテル検査を施行した 2 歳未満の川崎病または中等度以下の肺動脈弁狭窄患児 N群(47例,BSA 0.22~0.52,中央値0.42)と,VSD群(53例,BSA 0.17~0.55,中央値0.35)を対象とした.【方法】左室または大動脈造影の側面像から,S-T junction(D1),腕頭動脈起始直前(D2),左鎖骨下動脈起始直後(D3),横隔膜レベル(D4)の径を計測し,N群の計測値をもとに,BSAから各部位における正常予測値を算出した.VSD群各症例の各部位における% of normal(% of N)を算出し,N群と比較した.さらに,Qp/Qs,Pp/Ps,Rpと各部位の% of Nとの関係を調べた.また,後に大動脈縮窄(CoA)を呈した症例の有無を調べた.【結果】正常予測値は,D1 = 20.7 × BSA + 3.2(p < 0.001,R2 = 0.69)D2 = 15.1 × BSA + 4.6(p < 0.001,R2 = 0.48)D3 = 15.3 × BSA + 2.6(p < 0.001,R2 = 0.67)D4 = 16.1 × BSA + 1.3(p < 0.001,R2 = 0.74)であった.VSD群における% of Nは,D1:66.9~151(96.9),D2:75.4~144(99.1),D3:67.0~116(92.8),D4:78.9~118(97.5)であった.N群と比較したところ,D1,D2では有意差はなく,D3,D4ではVSD群で有意に小さかった.Qp/Qs,Pp/Ps,Rpの値とD1~D4の%of Nとの間に有意な相関はなかった.のちにCoAを呈した症例はなかった.【結語】(1)乳児の大動脈径の正常予測値を体表面積から計算する式を求めた.(2)VSD群では正常群に比べ,左鎖骨下動脈起始部以降の径が有意に小さかった.(3)VSD群においてQp/Qs,Pp/Ps,Rpの値と大動脈径との相関はみられなかった.(4)大動脈径が70% of N程度あれば,CoAを呈する可能性は低いと推察された.

閉じる