P-I-C-2
肺静脈瘤,肺静脈走行異常を合併した総肺静脈還流異常症(III型)の 1 例
群馬県立小児医療センター循環器科1),群馬県立小児医療センター心臓血管外科2)
金井貴志1),小林 徹1),鈴木尊裕1),鈴木政夫2),村上 淳2),小林富男1)

【はじめに】先天性肺静脈瘤はまれな疾患であるが,今回われわれは肺静脈走行異常を伴う先天性肺静脈瘤を合併した総肺静脈還流異常症(III型)の症例を経験したので報告する.【症例】日齢 0,男児.39週 1 日,2,844gで出生し,直後よりチアノーゼを認めたため,先天性心疾患疑いで当センターに入院した.入院後,総肺静脈還流異常症(III型),肺静脈閉塞と診断し日齢 0 日に心内修復術(inferior approach,左房─共通肺静脈腔吻合術,垂直静脈離断術)を施行した.術中所見では 4 本の肺静脈が共通肺静脈腔に還流していることが確認されている.術後,心エコーで左胸部に異常血管を認め,右下方に向かうflowを観察していたが,術後経過良好で肺うっ血像も認めないため外来で定期フォローされていた.術後 1 年後の心臓カテーテル検査を施行した際,肺動脈造影の肺静脈相で右肺門付近に肺静脈瘤を認め,さらに左房に環流する 4 本の肺静脈以外に新たに左下肺野から起始する肺静脈が右肺へ走行し肺静脈瘤に還流する所見を得た.肺静脈圧上昇を伴わない先天性の肺静脈瘤についてはごくまれに破裂の死亡報告もあるが,通常治療の必要性はないとされているため,現在本症例は無症状でもあり経過観察としている.【考察】先天性肺静脈瘤は肺静脈発生過程の異常と考えられているが,門脈への共通肺静脈の環流および対側肺への肺静脈走行異常も合併した症例の報告は前例がなく,極めてまれと考えられたので文献的考察を加え報告する.

閉じる