P-I-C-7
当院における先天性心疾患での16列マルチスライスCTの検討
社会保険中京病院小児循環器科1),社会保険中京病院心臓血管外科2)
西川 浩1),松島正氣1),加藤太一1),牛田 肇1),秋田利明2)

【背景】マルチスライスCT(MSCT)はスライス厚の菲薄化,X線管の高速回転化,新たな画像再構成法の開発により進歩し,高分解能の三次元表示(3D)することで,小児循環器領域でも従来の血管造影法(アンジオ)に替わる非侵襲的な画像診断法として重要な役割を担うようになった.【目的】当院では2003年 5 月より16列MSCT(東芝製Aquilion)を導入.小児循環器領域で施行した症例での有用性,方法および問題点について検討した.【対象および方法】これまでに16列MSCTで3D構築した22例,計25回(複数回は 2 回 1 例,3 回 1 例)を生後 2 カ月までに行ったA群10例(45%),計12回(48%)とそれ以上でのB群12例,13回とに分けて後方視的に検討した.造影剤投与は全例で手背末梢静脈から,A群では10~12ml/回,0.4ml/秒 + 2ml/回,0.2ml/秒の 2 段注入.B群は成人(95ml/回,2ml/秒)を基準に体重換算して行った.撮像タイミングは両群とも注入終了 8 秒前から開始し,3D構築は医師立ち会いで行った.【結果および考察】A群では動脈管依存性肺血流疾患群 4 例(40%)と同・体血流疾患群 4 例(40%),A-P window,TAPVDが 1 例ずつあった.退縮する動脈管に伴うPAやAoの形態や変化を把握し手術方針を立てることが可能であった.B群では大動脈縮窄病変,PAや気管支との関係(TOF,c-TGA),PV(還流異常症術前後やFontan後),冠動脈(TGA術後)の検討のために行った.PAやAoの形態,PVや気管,食道との関係把握に加え,冠動脈異常の描出などより多種の臨床応用が可能であった.アンジオは二次元診断であり,隣接臓器と血管との関係は明確ではないが,MSCTでは目標や周辺臓器との形態位置関係を明示することが可能であった.問題点として内腔を充盈できるより少ない造影量や投与法などの検討が挙げられた.【結語】16列MSCTは新生児,乳児を含めた先天性心疾患において血管形態把握のうえでアンジオに替わり,迅速,簡便に行える検査である.

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