P-I-C-9
連続波ドプラ法を用いた術後末梢性肺動脈狭窄の圧差の評価
東京女子医科大学循環器小児科
森 善樹,富松宏文,中西敏雄,中澤 誠

【背景】心エコーのドプラ法による簡易ベルヌイの式を用いた圧差(PG)の算出は臨床で広く用いられ,その有用性は報告されている.しかし術後の末梢性肺動脈狭窄(PPS)の圧較差(PG)の推定に適応できるかの検討は限られている.【目的】術後PPSのPGの評価にドプラ法を用いた方法が適応できるかを検討すること.【対象と方法】心エコー検査とカテーテル検査との間隔が 3 日以内の症例で,両側もしくは左右一側の狭窄を有する術後PPS 66例を対象にした.肺動脈弁,弁下,弁上狭窄合併の症例は除外した.心エコー法によるPG(Doppler PG)は,左,右肺動脈内の最大流速が 2m/secを超えるものを有意狭窄と定義し,狭窄部最大流速V1と狭窄前の流速V2を測定し,簡易ベルヌイの式を用いて算出した.これらと心臓カテーテル法にて得られた狭窄部のpeak to peak PG(catheter PG)と比較した.【結果】右肺動脈狭窄(rt.PS)(n = 54),左肺動脈狭窄(lt.PS)(n = 51)ともにDoppler PGはcatheter PGと相関はみられたが(rt.PS:r = 0.71,p < .0001,lt.PS:r = 0.69,p < .0001),Doppler PGはcatheter PGを有意に過大評価していた(両者の平均差:rt.PS = 20±12mmHg,p < .0001,lt.PS = 13±10mmHg,p < .0001).V2 で補正したDoppler PGも同様の結果であった(rt.PS:r = 0.80,p < .0001,lt,PS:r = 0.70,p < .0001,両者の差:rt.PS = 15±10mmHg,p < .0001,lt.PS = 9±10mmHg,p < .0001).【結語】術後PPSではドプラ法の(簡易)ベルヌイ式から算出したPGはカテーテル法で測定したPGを過大評価するため,その解釈に注意が必要である.

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