P-I-C-10
超音波法によるwave intensityの計測と意義
秋田大学医学部小児科
原田健二,青木三枝子,田村真通

【目的】循環系の任意の一点で血圧(P)および血流速度(U)の時間微分の積として定義されるwave intensity(WI)は主に左室収縮性を表す駆出初期W1波と拡張期特性を示す駆出後期W2波から構成される.WIは新しい心機能の指標と期待されているが,これらの波形記録には侵襲的検査を必要とし臨床応用の点で限界があった.本研究は超音波エコートラッキング法と血流速度波形の同時測定による非侵襲的手法を用いてWIの解析を行い,小児への臨床応用を試みたので報告する.【方法】対象は平均年齢 7±2 歳の正常小児11例と 4 例の小児心筋症(肥大型 2 例,拡張型 2 例).心エコー装置は超音波エコートラッキング法と超音波ドプラ法とを組み合わせた解析ソフト内蔵のAloka SSD-ProSound 6500(5~7.5MHzリニア探触子)を用いた.頸動脈における血管径変化と血流速度波形を同時記録し,これらから自動計測されるWIの 2 峰性波形のpeak値(駆出初期W1,駆出後期W2)を計測した.この際血流方向とドプラビームの角度は60度以内になるように微調整し,血流速度計測は角度補正した.血圧測定はカフ型血圧計を用いて右上肢で行った.【結果】全例W1およびW2波形の記録が可能であった.W1およびW2の平均はそれぞれ16.1±3.6(×103mmHg・m/s3),3.5±1.8(×103mmHg・m/s3)で,いずれもW1優位であった.収縮機能正常,拡張機能不全の心エコー所見の肥大型心筋症 2 例ではW1は13.2±2.6(×103mmHg・m/s3)と正常範囲であったがW2は0.5±0.6(×103mmHg・m/s3)と低値であった.心エコー上著しい収縮・拡張不全を示した拡張型心筋症 2 例ではW1およびW2いずれも7.8±1.5(×103mmHg・m/s3),0.6±0.2(×103mmHg・m/s3)と低値を示した.【考察】WI波形分析により左室収縮(W1)および拡張障害(W2)を検出できる.WIは頸動脈approachのため,心エコー施行が困難な周術期の心機能評価にも適用できる.

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