P-I-C-15
3D-CT検査が有用であった完全大血管転位症(TGA)術後冠動脈狭窄の 1 治験例
社会保険中京病院心臓血管外科1),社会保険中京病院小児循環器科2)
加藤紀之1),秋田利明1),櫻井 一1),長谷川広樹1),櫻井寛久1),松島正氣2),西川 浩2),加藤太一2),牛田 肇2)

【はじめに】これまで心臓大血管症例の画像評価は,超音波検査や血管造影検査が主体であった.しかし,平面画像を立体的にイメージする必要があり,複雑な病態では診断に苦慮することがあった.しかし最近ではMRAや3D-CTを用いより複雑な心大血管奇形を評価することができ,治療を行ううえでも有用となってきた.今回TGA術後の冠動脈入口部狭窄に対し3D-CTにより,正確に病態を評価できた 1 例を経験したので報告する.【症例】13歳,男性.生後 2 週間で,TGA(II)Shaher IIに対してJatene手術(Lecompte法)を行った.2 歳頃から大動脈弁閉鎖不全(AR)が進行.13歳頃から胸痛が頻回に出現するようになった.その後,運動中に胸部不快感が出現し当院受診.心電図検査ではV4-6 でSTが低下し,CPK値の上昇を認め,緊急冠動脈造影検査を施行した.しかしARがあり,また大動脈径が拡大していたため左冠動脈入口部にカテーテルをかけられず十分に左冠動脈を評価することができなかった.そこで3D-CT検査を行ったところ左冠動脈主幹部が折れ曲がり引き延ばされた状態であることがわかった.初回手術時にはcoronary eventは認めなかったがARの進行に伴い心拡大が起こり,左冠動脈全体が引き延ばされ起始部が先細りし心筋虚血が起こったと考えられた.術中,大動脈を切開し内側より観察すると左冠動脈入口部はslit状で細く 1mmのプローベがかろうじて通過するほどであった.走行を確認し入口部より大動脈壁をcut backし入口部から主幹部を拡大した.さらにAVRを行った.術後,3D-CT行い左冠動脈主幹部が十分拡大していることがわかった.【結語】3D-CTでは撮影情報を処理し立体構造を構築するうえで時間と経験を要するが,実際の術野を想定したイメージが得られ,術式を決定するうえでは非常に有用であると思われた.

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