P-I-C-16
核磁気共鳴画像法を用いた大動脈弁逆流量の非観血的測定法の検討―心内修復術後例を含む―
和歌山県立医科大学小児科1),和歌山県立医科大学第一外科2),紀南綜合病院小児科3)
上村 茂1),西原正泰1),末永智浩1),南 孝臣1),渋田昌一3),武内 崇1),鈴木啓之1),藤原慶一2),吉川徳茂1)

【目的】大動脈弁閉鎖不全症はさまざまな疾患に合併し,逆流量の定量的指標が治療方針に必要である.今回,各種の心疾患に合併した小児を中心とした大動脈弁閉鎖不全症につき,核磁気共鳴画像(MRI)法を用い大動脈弁逆流分画を算出し検討した.【方法】機種はSiemens社製(1.5T)を使用し,信号収集系列は位相画像法の至適流速250cm/s(上行大動脈),150cm/s(主肺動脈・房室弁輪部)を用いた.時間・流速曲線はコンソール内のソフトを用い作成し,収縮期上行大動脈通過血流量(Sys.AOFL)・拡張期大動脈逆流量(Dias.AOFL)・収縮期主肺動脈通過血流量(Sys.PAFL)・僧帽弁通過血流量(MVFL)・三尖弁通過血流量(TVFL)を測定し,大動脈逆流分画 = Dias.AOFL/Sys.AOFLを算出した.【対象】18名,1~25歳(平均12歳).疾患名はVSD(大動脈弁逸脱)術後 5 名,大血管置換術後 3 名,TOF & PA 術後 1 名,AS術後 1 名,総動脈幹術後 1 名,CoA術後&AS 1 名,AS 4 名,AR 2 名,TOF & AAE 1 名であった.【結果】(1)大動脈弁逆流は全例で測定できた.ただしTOF & PA術後の 1 名では拡張期撮影時間が短く不十分のため,Sys.AOFLからTVFL(有効大動脈拍出量と同等)を減じた値を大動脈弁逆流量とした.(2)Sys.AOFLは14名で測定ができた.測定が不能であった 4 名は大動脈弁狭窄が強い例であった.この 4 例中 3 例ではSys.PAFLを,肺動脈弁狭窄を合併した 1 名ではMVFLを有効大動脈拍出量として用い計測した.(3)大動脈逆流分画は30~40%;4 名,20~30%;3 名,10~20%;4 名,10%以下;7 名,であった.(4)MVFLは大動脈弁閉鎖不全血流の混入を生じ 4 名で不正確に過大に測定された.【結語】MRI位相画像法は大動脈弁狭窄例でSys.AOFLの測定ができない例や,また術後例で肺動脈狭窄などSys.PAFLの測定が不能であっても房室弁輪部の通過血流量を測定することで大動脈逆流分画を算出でき,治療方針の決定に有用であることを初めて報告した.

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