P-I-C-17
先天性心疾患症例における99mTc-MAA肺血流シンチグラフィの左右比に関する検討
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学
浅妻右子,糸井利幸,問田千晶,河井容子,吹田ちほ,藤本一途,田中敏克,坂田耕一,白石 公,濱岡建城

【背景】先天性心疾患の手術前後において左右肺血管床の評価には肺血流シンチが汎用されている.また一般的に肺血流量は肺動脈径に相関すると考えられている.しかし肺血流シンチ所見と肺動脈造影所見との比較のうえでおのおのの左右比が一致しない症例もしばしば経験される.そこで今回,肺動脈造影と肺血流シンチ所見における左右比の関連性について後方視的に検討を加えた.【対象】2002年 1 月から2003年12月までに肺血流シンチを施行した先天性心疾患患児31名のうち同時期に心臓カテーテル検査を施行した24例(2 カ月~16歳,平均36カ月)疾患はPA/VSD 7 例,SA/SV 8 例,DORV 5 例,TOF 1 例,TAPVR 1 例,その他 3 例.【方法】造影での肺動脈径から肺血管断面積を算出し,その左右比と肺血流シンチの左右比との比較検討を行った.分岐部や末梢に狭窄がある例では狭窄断面の最小面積が肺血流量を規定するとした.シンチの左右比と造影所見に不一致がある場合その原因として「側副血管の多い領域では肺血流量は増加する,肺静脈狭窄がある領域では肺血流量は減少する」という仮説を立てた.各症例をシンチでの集積について(1)R = L,(2)R > L,(3)R < L,および肺動脈断面積について(1)R = L,(2)R > L,(3)R < Lとして両者を組み合わせることにより合計 9 群に分類し仮説と一致する確率を算出した.左右比が1.0±0.2の症例をR = Lと定義した.【結論】仮説の成立率は75%であり,シンチと造影の左右比に相違がある症例では側副血管や肺静脈狭窄の影響を受けている可能性が示唆された.一方残り25%では仮説以外の要因が両者の不一致を来していると推定された.このため肺血流シンチ上での所見は必ずしも左右の肺動脈径を反映しているわけではなく,肺血流シンチ結果の考察に際しては側副血管や肺静脈狭窄の因子のほか肺実質病変など複数の要因を加味して慎重に評価する必要がある.

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