P-I-D-1
新生児開心術における吸引補助脱血法(VAVD)の有用性と展望
静岡県立こども病院心臓血管外科
太田教隆,坂本喜三郎,西岡雅彦,藤本欣史,村田眞哉,中田朋宏,関根裕司,横田通夫

【目的】2001年度より基礎実験を経て新生児開心術に吸引補助脱血法(VAVD)を採用してきた.今回その有用性を落差脱血群と比較し検討を加え報告する.【対象と方法】V群:2001年 4 月より2003年12月までのVAVDを用いた新生児開心術連続全66例とN群:1998年 1 月~2001年 3 月までの落差脱血で行った連続63例.送血は,arch再建時,3mm graftからinnominate Aoへ,それ以外は 8Fr(dlp)にて送血を行った.脱血は,12Frクラレ + 12Frパシフィコにて行った.【結果】VAVDによる 2 本脱血での一定流量(約0.51l/min)におけるリザーバ内圧平均は,約 -20~ -60mmHgと幅の広いものであった(基礎実験にて同様の回路を用いたHt 30%の血液での流量とreserver内圧はほぼ比例関係).一方溶血の指標として(V,N)の手術翌日のGOT(87.9±78.5,84.5±65.9),LDH(546.7±233.7,493.8±239.9)では有意差がなく溶血をさらに進行させるものではないと思われた.VAVD使用による問題点:操作上は全く見られなかった.priming volume(ml)(V,N):(327.0±36.2,382.5±63.7)(p < 0.01),reserver level(ml):(42.8±18.4,60.7±22.2)(p < 0.01)と有意差を認める.CPB中MUFまでHt > 30~35%を維持するために必要としたMAP輸液量(ml)は(122.5±119.5,159.6±138.3)とV群の方が少ない傾向にあった.【考察】同じflowに対し症例によって陰圧にばらつきが生じているのはそれぞれの術野展開による微妙なcannulaと静脈壁の位置関係によるものと思われる.陰圧が一定の落差脱血であれば軽度脱血不良に対して手術が止まりかねないような場面でも,VAVDによる微妙な陰圧コントロール(溶血のない範囲で)で十分対処が可能であり,無血視野も得ることが可能であった.一方新生児静脈に対して能力の高い脱血管が存在すればさらに陰圧が反映されると思われる.【結語】VAVDによる開心術は同じflowに対する陰圧の今後検討が必要であるが,新生児開心術をよりスムーズに行える一手段と思われる.

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