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左側開胸にて僧帽弁置換術を施行した左気管支狭窄,気管切開術後の完全型心内膜床欠損症B型の 1 例
北海道立小児総合保健センター小児科1),北海道立小児総合保健センター心臓血管外科2),横浜市立大学医学部第一外科3)
横沢正人1),長谷山圭司1),菊地誠哉2),高梨吉則3)

【はじめに】人工心肺下の開心術は正中あるいは右側開胸からのアプローチで行うのが一般的である.今回われわれは左気管支狭窄,気管切開術後のために左側開胸にて僧帽弁置換術を施行した 1 例を経験したので報告する.【症例】2 歳 1 カ月,女児.診断は完全型心内膜床欠損症B型,二次孔型心房中隔欠損症,筋性部心室中隔欠損症,左上大静脈遺残.重度の房室弁逆流のため日齢17に当センターに入院した.内科的治療にて心不全がコントロールできないため 3 カ月時に心内修復術を施行した.術後人工呼吸器から離脱できず,左気管支狭窄による左肺の無気肺を繰り返した.7 カ月時に肺動脈吊り上げ術を施行したが抜管できず,8 カ月時に洞不全,房室ブロックに対してDDDペースメーカ埋え込み術を施行,9 カ月時に気管切開術を施行した.その後左無気肺は徐々に改善したが房室弁逆流が進行したため,2 歳 1 カ月時に左側開胸にて僧帽弁置換術を試みた.主肺動脈より右肺動脈に 1 本,左上大静脈遺残より右房,同静脈末梢側に各 1 本脱血管を留置して 3 本脱血,下行大動脈に送血管を留置して体外循環を確立,心拍動下に左房を切開し僧帽弁に到達した.弁は変性が強く形成術は不能と判断,SJM 17mmにて弁置換術を施行した.心肺時間は131分,心肺からの離脱はスムーズであった.その後に感染性心内膜炎等に罹患し左室機能の低下を認めているが,抗凝固剤,強心剤,利尿剤,βブロッカー等投与にて 3 歳 5 カ月現在も入院加療中である.【結語】気管切開術後や左側肺の機能不全で正中や右側開胸からの開心術が不能な場合も左上大静脈遺残合併例など症例によっては左側開胸でのアプローチが可能な場合があるので検討が必要である.

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