P-I-D-6
人工心臓のup to dateと小児応用の問題点と可能性
東京医科歯科大学生体材料工学研究所
中村真人

2003年 1 月,日本発の磁気浮上型遠心ポンプ,テルモ社DuraHeartが,ヨーロッパを舞台に臨床治験が開始された.磁気浮上型遠心ポンプは,非接触でポンプ内の羽根車を回して血液を駆動し,摩耗や血液停滞が一切なく,補助人工心臓としては理想的なポンプである.長期の循環補助が期待でき,サイズ的にも,将来小児患者への応用が十分期待される注目デバイスである.人工心臓は,心筋炎,心筋症,虚血性心疾患,術後心不全などの重症心不全患者に装着され,救命とともに,移植や自己心回復までのブリッジとして,臨床成果を上げてきた.近年は,移植を受けられない患者のdestination therapyとして貢献するようにもなっている.人工心臓の小児への臨床応用は,主として小児用空気駆動型補助人工心臓が使われてきたが,近年,新しい小型電気駆動軸流ポンプが大人での臨床例を増やし,ついに昨年,MicroMed社の軸流ポンプDe Bakey LVADが,FDAに小児適用の申請をした.また,小児にターゲットを絞った,超小型デバイスも研究されつつある.人工心臓は臨床,研究ともに目覚ましく進歩しており,小児患者への応用が進むのも,まさに目前といえる.一方,人工心臓を要すると思われる小児患者は,サイズが小さい,先天性奇形が多い,手術適応のない患者が多い,しかも長い先を見越しての治療が必要,などの特有な問題がある.このような小児患者に対して人工心臓がどう貢献できるかは,まだまだ未知のところが多い.そこで,本演題では,人工心臓のup to dateを紹介し,さらに,小児への応用を踏まえ,人工心臓による手術適応のない患者へのアプローチ,手術成績向上,術後心不全患者への症状緩和,QOL向上への方策,さらに,新しい先端医療へのブリッジなど,小児の特徴と小児特有の有効利用,新しい使い方などについて,考察を加え,報告したい.

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