P-I-D-7
動脈管開存症(PDA)に対する低侵襲治療―カテーテル治療と内視鏡手術の併用―
北里大学医学部胸部外科
高崎泰一,宮地 鑑,町田浩志,新美裕太,鳥井晋三,贄 正基,小原邦義,吉村博邦

【目的】現在,動脈管開存症(PDA)に対する治療法としては,開胸による外科手術,内視鏡下閉鎖術(VATSPDA),カテーテルを用いた治療(coil塞栓)がある.動脈管開存症に対して,どのような治療戦略が安全確実で,低侵襲であるかを明らかにする.【方法】1994年から2003年に治療した動脈管開存症症例(新生児を除く)70例を対象とした.内訳はcoil(C群)23例,VATSPDA(V群)21例,開胸手術(T群)26例であった.体重はC群:16.7kg,V群:6.6kg,T群:11.1Kgであり,V群が有意に小さかった.PDA径は,C群:2.4mm,V群:5.8mm,T群:5.7mmであり,C群が他 2 群に比して有意に小さかった(C vs V:p < 0.001,C vs T:p < 0.001).これら各群の治療成績を比較検討した.【結果】C群はいずれもPDA径 3mm以下で,23例中17例(73.9%)でコイル塞栓できた.V群は開胸へ移行した症例はなく,全例無輸血で閉鎖.T群は左開胸で全例無輸血で終了している.手術時間は,C群(成功例):73分,V群:91分,T群:106分であり,C群が有意に短時間であった.V群とT群間には有意差を認めなかった(C vs V:p < 0.05,C vs T:p < 0.01,V vs T:p = 0.15).術後在院日数では,C群:3.6日,V群:2.7日,T群:6.3日で,T群は他の 2 群に比して有意に長期であり(C vs T:p < 0.01,V vs T:p < 0.01),C群とV群には有意差を認めなかった.合併症は,C群は.1 例はコイル回収できず,緊急開心手術となった.V群では 1 例で乳び胸を認め,VATS下に胸管結紮を行った.1 例で 4 カ月後に遺残PDA指摘され,coilにて閉鎖した.T群では 2 例で創感染を認め,1 例で 9 カ月後遺残PDA指摘され,coilにて閉鎖した.【結語】3mm以下のPDAはカテーテル治療で,それ以上はVATSPDAで閉鎖するのが最も確実で低侵襲であると示された.開胸手術の有用性は認められず,カテーテル治療と内視鏡手術の併用がPDAに対する優れた治療戦略であると思われる.

閉じる