P-I-D-9
Ebstein奇形の外科治療における弁機能を正常弁輪へ移動させることの重要性
徳島大学医学部循環機能制御外科学1),徳島大学医学部小児科2)
神原 保1),北市 隆1),浦田将久1),元木達夫1),黒部裕嗣1),市川洋一1),富永崇司1),増田 裕1),森 一博2),北川哲也1)

Ebstein奇形の外科治療において,plasterの範囲と深さ,前尖の大きさ・可動性により,適切な術式を選択すべきである.最近 3 例の外科治療経験から,弁形成術の要点について検討した.【症例】症例 1:5 カ月,LOSで潜在性WPWを伴う.Carpentier(Cpt)分類B型でSTL-PTLにかけて深くplasterするが,ATLは大きく可動性良好.症例 2:5 歳,LOSで潜在性WPWを伴う.Cpt分類C型でSTL-PTLにかけて深くplasterし,前乳頭筋がshort chorda様でそのまま弁尖に付着し,plasterしたPTLにかけて可動性が損なわれている.ATLは大きくないが可動性良好.症例 3:33歳,DOEを認める.Cpt分類B型でSTLの後側-PTLにかけて中等度にplasterし,ATLは大きく可動性良好.【手術と結果】症例 1,2 で副伝導路凍結術を併用した.症例 1:右房化右室を縦に縫縮し,STLとPTLの残存plaster部を正常弁輪へ吊り上げた.LOSから離脱し,著明な改善をみた.症例 2:右房化右室を縦に縫縮し,もともとの変位したままの位置で形成術を施行した.術後,右房─右房化右室間に著明なto and fro血流が残存する機能的TRにてLOSが持続した.5 カ月後に弁機能を正常弁輪へ移動させるCpt手術を施行した.前乳頭筋はそのままで,前乳頭筋よりPTL側弁尖に付着する副乳頭筋,腱索を切離し,移動させるATLに連続する弁尖の可動性を作った.術後TRは減少し,LOSから離脱し,修学可能となった.症例 3:Cpt手術により著明に改善した.【考察】Ebstein奇形の外科治療において,正常弁輪で三尖弁を機能させることが重要で,個々の三尖弁形態に応じた修復術を考慮すべきであり,右房化心室を心室側におくことが重要で,縫縮の必要性については今後の検討を要する.

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