P-I-D-11
BWG症候群の伴う僧帽弁閉鎖不全症に対する外科治療
国立循環器病センター心臓血管外科
後藤智行,八木原俊克,上村秀樹,鍵崎康治,萩野生男,康 雅博

【はじめに】BWG症候群に伴う僧帽弁閉鎖不全症(MR)は,心筋や乳頭筋の虚血,線維化,弁輪拡大が原因と考えられている.そのため冠動脈の再建により,ある程度のMRは改善が期待される.しかし心筋や乳頭筋に不可逆的変化を来した症例に対しては,手術介入を考慮する必要があると考える.今回,BWG症候群に伴うMRに対する外科治療について検討した.【対象】1984年以降,BWG症候群に伴うMRに対し外科治療を施行した 7 例(A群),外科治療を施行しなかった 6 例(B群)の計13例を対象とした.【結果】手術時年齢(中央値)はA群:1 歳(5 カ月~60歳),B群:8 歳(2 カ月~29歳),男女比はA群:2/5,B群:2/4 で,A群は乳児型 5 例,成人型 2 例,B群は乳児型 3 例,成人型 3 例であった.BWG症候群に対しA群では竹内法 3 例,translocation 4 例,B群では竹内法 3 例,translocation 3 例を施行し,MR 3 度以上の症例に対し同時に手術介入した.手術介入したMRは 7 例全例に弁輪拡大を伴い,1 例にanterolateral側のrough zone chordaeの断裂を,また 1 例にstrut chordaeの異常延長を認めた.全例にKay法によるfigure“8”sutureを施行し,1 例に自己腱索再建を,また 1 例に腱索短縮,Duran ringを用いた弁輪縫縮術を追加した.MRは術前(A群:3.3度,B群:1.5度)が,術後(A群:1.6度,B群:0.3度)に改善し,遠隔期にても両群ともMRの進行は認めず,再手術の介入もなかった.LVDdは術前(A群:46mm,B群:48mm),術後(A群:38mm,B群:33mm)で有意に減少した.A群で遠隔死亡 1 例,病院死亡 1 例を,B群で病院死亡 1 例を認めた.いずれの症例も左室拡張期末容積が700%を超える重度の心拡大,心不全を認める症例であった.【まとめ】BWG症候群に伴う 3 度以上のMRに対し,冠動脈再建と同時に弁形成術を施行した.遠隔期におけるMRの増悪や再手術介入もなく良好な結果が得られた.2 度以下のMRは,冠動脈の再建のみで逆流の改善が期待された.

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