P-I-D-13
βブロッカー(carvedilol)投与により心機能が改善し,Fontan型手術を施行しえた 1 例
国立循環器病センター小児科
細田和孝,吉田葉子,濱道裕二,大内秀雄,塚野真也,山田 修,越後茂之

【はじめに】carvedilolは小児においても,通常の抗心不全治療(利尿剤,ジギタリス,ACE阻害剤)への反応不良例に使用され,心収縮力,心不全症状の改善が報告されている.今回,両方向性Glenn手術(BDG)後に心機能が低下し,carvedilol投与により心機能が改善し,Fontan型手術を施行しえた症例を経験したので報告する.【症例】2 歳男児.2 生日に心雑音を指摘され,TA,TGA,VSD,PSと診断され,2 カ月時に肺動脈絞扼術(PAB),7 カ月時にBDGを施行された.BDGから 6 カ月後に咳嗽など心不全症状が出現し,胸部Xpにて心拡大(CTR 64%)を認め,心エコーにて駆出率の低下(LVEF 26%)を認めた.心臓カテーテル検査(心カテ)にてLVEDP 8mmHg,LVEDV 422% of normal,LVEF 26%と心機能低下が認められた.冠動脈に有意な所見は認めなかった.ジギタリス,ACE阻害剤を開始したが,心機能の改善は軽度のみであり,carvedilolを0.06mg/kg/dayから開始し,0.5mg/kg/dayまで増量した.内服開始から10カ月の心カテではLVEDP 6mmHg,LVEDV 164% of normal,LVEF 61%まで改善した.HANPおよびBNPはそれぞれ23pg/ml(最高値320),15.7pg/ml(最高値413)まで改善した.Fontanの適応と判断され,2 歳 2 カ月時に心外導管型TCPC術を施行した.術後,carvedilolは中止しACE阻害剤のみ継続した.術後 1 カ月の心カテでLVEDP 5mmHg,LVEDV 144% of normal,LVEF 47%と心機能の悪化は認めなかった.【結語】Fontan型手術待機中の心機能低下に対し,carvedilol投与は検討されるべき治療の一つであると考えた.

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