P-I-D-15
長期在宅酸素療法により肺血管条件が改善しFontan手術が可能となったDown症児の 1 例
岡山大学大学院医歯学総合研究科心臓血管外科1),岡山大学大学院医歯学総合研究科小児科2),岡山大学大学院医歯学総合研究科麻酔・蘇生科3)
黒子洋介1),石野幸三1),大岩 博1),吉積 功1),小泉淳一1),竹内 護3),大月審一2),川畑拓也1),宮原義典1),佐野俊二1)

症例は 7 歳女児.生下時より心雑音・心不全・チアノーゼから心内膜床欠損症(左室優位のunbalance型),大動脈弁下狭窄,肺高血圧として,肺動脈絞扼術(11カ月),右肺動脈狭窄に対する右Blalock-Taussig短絡術(2 歳11カ月)の後,4 歳 6 カ月時に両方向性Glenn手術およびD.K.S.吻合術を受けた.術後は長期間の乳び胸と低酸素血症(SpO2 60%台)が特徴的であった.術後のカテーテル検査では,上大静脈・肺動脈平均圧は15mmHgであったが,肺血管抵抗は3.89U・m2と高く,Fontan型手術は困難と考えられた.肺血管抵抗を下げる目的もあり在宅酸素療法を導入し経過観察を行った.1 年 2 カ月後の検査では変化は見られなかったが,2 年 6 カ月後では上大静脈・肺動脈平均圧は 7mmHg,肺血管抵抗は2.0U・m2と低下していたため,7 歳 1 カ月時にfenestrated Fontan手術を行った.術後CVPは11~14mmHgでSpO2は84~91%であった.術後 1 日目には一般病棟へ退室となり,その後の経過も経鼻酸素投与下で順調である.Down症児に対するFontan型手術の報告は極めて少なく,その背景としてDown症児特有の肺血管床および気道の問題による肺高血圧が挙げられる.本例では長期在宅酸素療法が肺血管条件の改善に寄与したことが推測され,右心バイパス術適応外・境界例とされていたDown症児にとって在宅酸素療法は朗報となるかもしれない.

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