P-I-D-16
大動脈縮窄症に対するEPTFE patch aortoplastyの再考察
山梨大学医学部第二外科1),立川綜合病院循環器脳血管センター心臓血管外科2),山梨大学医学部小児科3)
石川成津矢1),鈴木章司1),吉井新平2),井上秀範1),福田尚司1),加賀重亜喜1),松本雅彦1),杉山 央3),星合美奈子3)

【はじめに】大動脈縮窄症(CoA)に対するpatch aortoplastyでは,遠隔期の瘤化が問題とされており,現在当科でも標準術式としては (extended)end-to-end anastomosis (EEA)が用いられている.しかし,瘤化の報告の多くはDacron patchが用いた1980年代のもので,最近のEPTFE patchを使用した症例の成績は比較的良好で,瘤化の報告は 1 例しかない.【目的】EPTFE patch aortoplastyを施行した症例を後方視的に検討し,その成績と適応について再考察すること.【対象】1987年以降にEPTFE patch aortoplastyを施行したCoA 8 例.うち 4 例はCoA complexの二期的修復例であった.手術時年齢は 1 カ月から 5 歳(中央値 2 カ月).手術時体重は2.1kgから14kg(中央値3.3kg).【結果】早期死亡は 2 例で,CoA修復後 1 カ月の消化管出血死と 4 カ月後の突然死であった.生存例 6 例の経過観察期間は 1 年から16年で,瘤化は認めなかった.2 例に残存狭窄(エコーまたはカテーテルで20mmHg以上の圧較差)を認め(20,45mmHg),balloon dilatation angioplastyを施行した.再手術症例はない.最近のpatch aortoplasty適応例は,long isthmus(12mm)のCoA complex例であった.【考察】経過観察期間は短いが,EPTFEを用いたpatch aortoplastyでは瘤化を認めなかった.標準術式はEEAであるべきと考えられるが,isthmusが長いためにsubclavian flap + EEAを要するような症例においては,現在でもEPTFEを用いたEPTFE patch aortoplastyは選択肢の一つとなりうると考えられた.

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