P-I-E-2
Tracheal bronchusを合併し気管内ステント留置術を行った無脾症候群の 1 例
京都大学医学部小児科1),京都大学医学部心臓血管外科2)
徳舛麻友1),馬場志郎1),平海良美1),土井 拓1),中畑龍俊1),根本慎太郎2),池田 義2)

先天性心疾患において,動脈管(PDA)等の外的圧迫により気管病変を合併することがある.今回われわれは肺動脈閉鎖(PA)を伴う無脾症候群で,PDAにより右tracheal bronchus(TB)が圧排狭窄を来し,外的圧迫解除のみでは軽快せず気管内ステント留置術を行った症例を経験した.【症例】生後 1 カ月の男児.胎児期に無脾症候群に伴う複雑心奇形と診断され,妊娠38週 2 日帝王切開にて出生した.Apgar scoreは 8 点(1 分)/9 点(5 分).出生後の診断は,単心房,単心室,肺動脈閉鎖,動脈管開存,総肺静脈還流異常(Ia),右大動脈弓で,肺静脈閉塞はなかった.動脈管維持のため,lipo-PGE1を 5ng/kg/minで開始したが,day 16より呼吸数が増加し,右上肺野の呼吸音減弱を認めた.胸部X線では右上肺野の透過性亢進が認められ,造影MDCT,bronchofiberscope(BF)により,TBと診断された.拡張したPDAと右大動脈弓の間でTBが圧迫され,肺葉性肺気腫を来していた.日齢30に人工心肺下でPDA離断術とB-T shunt術が施行された.圧迫は解除されたが,人工心肺より離脱できずECMO管理となった.術後,肺気腫は改善せず,BFで気管狭窄の残存が認められた.気管狭窄の原因はTBの軟化症と考えられたため,救命的に日齢33,BF下にてTB内ステント留置術を行った.経過は良好で,日齢35にECMOより離脱し,日齢46に抜管した.その後も経過順調であったが,日齢48にシャント閉塞が原因と思われる呼吸循環不全にて失った.【考察】われわれの症例では,姑息手術後に低酸素血症を来したが,TBの狭窄による肺換気血流不均衡のためと思われる.先天性心疾患で気管病変を合併する場合,外的圧迫解除のみで改善しない時にはBFで気管内病変を評価し,適切な治療を行う必要がある.また,気管支の異常と大血管の関係を評価するのに,造影MDCTは有用であった.

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