P-I-E-3
心大血管の圧迫により気管狭窄を来した 5 例の検討
県立岐阜病院小児循環器科1),県立岐阜病院小児心臓外科2)
安達真也1),桑原直樹1),後藤浩子1),桑原尚志1),滝口 信2),八島正文2),竹内敬昌2)

【背景】心大血管の圧迫により気管狭窄を来す症例は比較的まれであるが,新生児および乳児の呼吸障害の原因として重要であり診断,治療に苦慮することが多い.【対象】当科にて経験した心大血管の圧迫により気管狭窄を来した 5 例について経過,検査所見,治療,予後について後方視的に検討した.疾患の内訳は<症例 1>肺動脈弁欠損を伴ったファロー四徴,<症例 2>vascular sling,<症例 3>心室中隔欠損 + 肺高血圧,<症例 4>無名動脈による圧迫,<症例 5>上心臓型総肺静脈還流異常である.【結果】呼吸障害の出現時期は,出生直後が 2 例<症例 1,2>,生後 1 カ月が 2 例<症例 3,4>,生後 7 カ月が 1 例<症例 5>であった.<症例 1>では出生直後より人工呼吸管理となった.3 例に喘鳴を認めた<症例 2,3,4>.大血管との関係を判断するため,ヘリカルCTを 3 例<症例 2,3,5>に施行した.気管狭窄の部位,程度を判定するため,気管支ファイバを全 5 例に施行した.外科的治療は 4 例に施行され,術式は生後12日目PAB + lt BT shunt,1 歳時心内修復術 + 肺動脈縫縮術<症例 1>,6 カ月時肺動脈再建術,腕頭動脈吊り上げ術<症例 2>,2 カ月時心内修復術,上行大動脈吊り上げ術<症例 3>,8 カ月時心内修復術<症例 5>であった.<症例 4>のみ外科的治療を施行せず経過観察とした.<症例 2,3,5>では術中の気管支ファイバにて気管狭窄の改善を確認した.術後も呼吸障害が遷延した症例は 2 例<症例 1,3>あった.【考察】新生児および乳児の呼吸障害には大血管の圧迫による気管狭窄を考慮する必要がある.気管支ファイバは気管狭窄の部位の同定および術中の気管圧迫解除の判定に有用であった.治療により気管の圧迫が解除されても呼吸不全が遷延する症例があった.

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