P-I-E-4
術後呼吸不全に対して高振幅換気の併用が有用であった 2 症例
兵庫県立尼崎病院心臓血管外科1),兵庫県立尼崎病院心臓センター小児部2)
大谷成裕1),野本慎一1),朴 昌禧1),齋藤文美恵1),森島 学1),槇野征一郎2),坂崎尚徳2),若原良平2)

【目的】今回われわれは重症呼吸不全に高振幅換気(hi-frequency-ventilation,以下HFV)と従量式人工呼吸器を併用して,有効であった 2 例を経験したので報告する.【対象】動脈管開存症,肺出血の10カ月例と単心室,修正大血管転位症の23歳例.【経過】症例 1;生後10カ月,男児で心不全とMRSA肺炎の合併のため,肺出血を来し他院で挿管,人工呼吸器管理を行っていたが,肺出血増強のため当院搬送後,動脈管結紮術と肺動脈絞扼術を施行した.術後低酸素血症のため,HFV装着した.症例 2;単心室,修正大血管転位症,肺動脈絞扼術後,右BTシャント術後の23歳,女性で大動脈弁下部狭窄,完全房室ブロックのため,Damus-Kaye-Stansel吻合,双方向性グレン手術,ペースメーカ埋え込み術を施行した.その後肺炎と低酸素血症のため,グレン解除術と右BTシャント術,セントラルシャント術を施行したが,人工心肺離脱後,低酸素血症のためECMOを装着した.術後 2 日目左下肢阻血のためHFVを併用し,ECMOから離脱した.【結果】症例 1 はHFVを併用後,PaO2は40.4から71.5mmHgに上昇,PaCO2は43.7から22.5mmHgに低下した.HFV単独ではPaO2:65.4,PaO2:73.1mmHgと換気不全であった.HFV装着後10日目と17日目に離脱したが,肺出血の増強のため,術後18日目に死亡した.症例 2 はECMO(CI;0.5)装着時とHFV併用後の比較でPaO2は42.6,44.0mmHg,PaO2は39.9,43.7mmHgで大差がなかった.HFV装着後 5 日目に離脱し,術後17日目の現在人工呼吸器管理である.【考案】乳幼児で従圧式,従量式単独の人工呼吸器のみやHFV単独で呼吸不全を制御できない場合,HFVとサーボを併用すると換気改善と低酸素血症の改善がみられ,ECMOを回避することが可能であった.またECMO使用症例でも離脱時にHFVとサーボを併用して安定した人工呼吸管理が可能であった.【結語】HFVとサーボの併用は乳児の肺出血等の重症呼吸障害例やECMO離脱時の呼吸補助として有用なことが示唆された.

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