P-I-E-6
窒素を用いた低濃度酸素吸入療法が並列循環の体血流に及ぼす影響
岩手医科大学附属循環器医療センター麻酔科
門崎 衛,小山耕太郎,高橋 信,石塚公彦,川村隆枝,石原和明

【背景】並列循環の患者において,窒素を用いた低濃度酸素吸入(N2吸入)が動脈血酸素飽和度を低下させることは明らかであるが,体血流および組織の酸素化に及ぼす影響はいまだ明らかにされていない.【対象および方法】対象は左心低形成症候群の診断にてmodified Norwood術を施行した 4 例.麻酔導入後,3 例において,大腿静脈からEdwards社製 4Fr oxymetry catheterを横隔膜レベルに挿入し,体静脈酸素飽和度(SvO2)をモニタした.1 例において,近赤外線を用いた局所組織酸素飽和度(rSO2)測定装置であるEdwards 社製Invos 5100を用い,前頭部および体幹部のrSO2をモニタした.N2吸入は窒素ボンベより微量流量計を用い,麻酔器のF回路吸気側より取り込み,気管チューブ接合部での吸入酸素濃度を計測した.FiO2 = 0.21,調節呼吸にて経皮的酸素飽和度(SpO2)が85%を超えた時点で,SpO2 = 75% を目標にN2吸入を調節した.N2吸入開始前後で吸入酸素濃度,SvO2,動静脈間酸素飽和度格差(Sp-SvO2)およびrSO2を計測し,比較検討した.統計はpaired t testを用いp < 0.05を有意とした.【結果】SpO2を75%に低下させるのに用いた吸入酸素濃度は19.3±0.9%であった.N2吸入によりSvO2は有意に低下したが(63.7±1.5 vs 52.3±1.5,p < 0.05),Sp-SvO2は有意な変化を認めなかった(24.0±2.6 vs 23.3±1.2,p = 0.39).rSO2は前頭部,体幹部ともに低下を示した.【結論】動静脈間酸素飽和度格差は改善されず,組織酸素飽和度の低下を来したことから,窒素を用いた低濃度酸素吸入療法は,開始直後は体血流および組織の酸素化を改善しない可能性が示唆された.

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