P-I-E-7
小児開心術に対するクリニカルパス導入の試み―心房中隔欠損症への適応―
茨城県立こども病院心臓血管外科
金本真也,阿部正一,松原宗明

【目的】小児心臓手術管理の標準化,効率化を目的として心房中隔欠損症例(ASD)に対してクリニカルパス(CP)の導入を試みた.【過去のASD症例分析】過去10例のASD症例を再検討した.全例手術当日抜管,1 例を除き手術翌日にICU退室,在院期間は 8 日が 9 例,9 日が 1 例.抗生物質投与期間:75hr(54~95),末梢ライン留置期間:93hr(70~112),術後酸素投与期間:79hr(42~115),monitoring期間:83hr(42~114)と症例間のばらつきが大きかった.【CPの到達目標】次のように設定した.手術当日;抜管.術後 1 日目;ドレーン,A・CV-line抜去とICU退室.術後 3 日目;抗生物質投与,monitoring中止,DIVライン抜去,酸素投与中止.術後 8 日目;退院.CPはoverview形式として,医師・看護記録,点滴指示等は別紙に記入とした.また,CPは診療用と家族用の 2 種類を作成,家族用CPは本人および家族に提示し,治療計画を明示した.【結果】5 例のASD症例に試験的に運用した.全例CPからの逸脱もなく到達目標を達成し,術後 8 日目に退院した.抗生物質投与期間:55hr(40~64),末梢ライン留置期間:63hr(43~68),術後酸素投与期間:18hr(16~20),monitoring期間:43hr(41~45)と症例間のばらつきも少なくなり,予定より早く目標に到達する傾向にあった.試験運用の結果を参考に今後CPの内容を修正する予定である.【考察】CP運用中以下の問題点が明らかとなった.(1)医師および看護記録は別に記載するため情報の共有化ができない.(2)点滴指示等はCPに組み込まれておらず煩雑となった.解決策として日めくり式CPとの併用を検討中である.【結語】ASDのように比較的定型化した疾患でも,CP導入により治療の標準化,効率化が図れた.今回作成したCPを基に,他の小児心臓手術症例に対してもCPの適応を広げていく予定である.家族用CPは治療経過が一覧できるため経過がわかりやすく好評であった.

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