P-I-E-9
先天性心疾患に対する開心術後急性期における低濃度NO吸入療法の効果
徳島大学医学部循環機能制御外科学1),徳島大学医学部集中治療部2)
北市 隆1),増田 裕1),富永崇司1),神原 保1),市川洋一1),黒部裕嗣1),元木達夫1),浦田将久1),福田 靖2),北川哲也1)

【目的】一酸化窒素(NO)吸入療法は,その肺血管拡張作用が有利に働くと考えられるさまざまな病態に応用できると考えられる.当科では,1994年以降,院内倫理委員会の承認を得てinformed consentのもとに臨床応用を開始したが,今回,10年にわたる使用経験を病態別に検討を行った.【対象と方法】対象は,先天性心疾患の開心術後急性期にNO吸入療法を行った66例を病態によって(1)Fontan型手術後の23例(FT群),(2)高肺血流による肺動脈高血圧を呈した14例(pa-PH群),(3)肺静脈肺高血圧を呈した12例(pv-PH群),(4)PPA,TF/PAなど乳児期根治術後に右室後負荷軽減を期待して使用した17例(low PF群)に分類した.平均年齢はそれぞれ2.2,1.2,1.0,0.7歳.NO吸入濃度は 5~10ppmとし,吸入前と吸入後30分での収縮期血圧(s-BP),CVP,動脈血酸素分圧 / 吸入酸素濃度(PaO2/FiO2)の変化を検討した.【結果】FT/HF群では,s-BPの変化は軽度ながら,CVPの低下(15.9→15.0,p = 0.06),PaO2/FiO2の改善(64.2→75.4,p = 0.02)を見た.h-PH群も,s-BPの変化は軽度ながら,CVPの低下(9.0→8.2,p = 0.06),PaO2/FiO2の改善(117.6→150.4,p < 0.01)を見た.c-PH群では,s-BPは上昇(73.5→77.9,p = 0.04)したが,CVPの低下,PaO2/FiO2の改善は軽度であった.low PF群では,s-BP,CVPの変化は軽度ながら,PaO2/FiO2の改善(169.7→196.4,p = 0.07)を見た.メトヘモグロビン上昇など重篤な副作用は認めなかった.【考察】NO吸入療法は,残存病変の有無などにより,その効果は一定ではないが,今回検討した病態においては循環動態の安定,酸素化の改善に寄与すると考えられる.

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