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急激に進行した高カリウム血症による心停止に対し人工心肺施行により救命した悪性高熱症の 1 例
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児発達機能病態学
荒田道子,福重寿郎,西順一郎,河野幸春,野村裕一,吉永正夫,河野嘉文

【症例】6 カ月男児.1 カ月健診で心雑音から当科紹介受診.心室中隔欠損症(VSD),心房中隔欠損症(ASD)の診断で外来経過観察となった.多呼吸,肝腫大が出現し,利尿剤,強心剤を開始するも心不全は持続した.5 カ月時に心臓カテーテル検査を施行し[Qp/Qs 2.8,肺動脈圧61/15(37)mmHg]手術適応と判断した.6 カ月時にVSDおよびASD閉鎖術を行った.家族歴に特記事項はなく術前のCK値も正常だった.全身麻酔は笑気,sevoflurane,fentanyl,midazolamで行い,筋弛緩薬はvecuronium bromideを使用した.術後 2 時間で抜管しその後の状態は安定していたが,翌朝から発熱が出現.41℃と高体温になり呼吸状態悪化,アシドーシスが進行し再挿管後に心停止.血清Kは急激に上昇し心停止時は10.3 mEq/lと高値だった.体外心マッサージおよび開胸心マッサージを行い90分後に人工心肺を開始した.全身麻酔はpropofolで行いdantrolene sodiumも併用した.人工心肺開始後速やかに心拍再開し 4 時間で離脱.術後63日に軽快退院したが軽度発達遅滞が残存.【考案】悪性高熱症は全身麻酔に伴う重篤な合併症の一つでほとんどは麻酔開始 2 時間以内に発症する.しかしまれではあるが術後24時間後までは発症の可能性があり,本児はCK 167,688IU/l,尿中ミオグロビン331,552ng/mlと著明高値もあり,遅発性の悪性高熱症を発症したものと考えられた.筋融解から高K血症が急激に進行し心停止を来したが,このような急激な経過を呈する場合は薬物療法等による対処は困難であり,過去には持続血液濾過を使用した例の報告もみられる.本例においては開胸心マッサージから人工心肺開始へと迅速に対処できたことが救命につながったものと思われた.【結語】遅発性悪性高熱症からの急激に進行する高K血症から心停止を来した児において,人工心肺を速やかに開始することで救命が可能だった.

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