P-I-E-12
小児病院循環器病棟におけるMRSAの動態と院内感染予防対策
神奈川県立こども医療センター循環器科
康井制洋,宮本朋幸,林 憲一,上田秀明,金 基成

【目的】小児循環器疾患入院診療におけるMRSA検出の意義について検討する.【方法】2001年 4 月から 2 年間の当院循環器病棟(26床)入院患者を対象としてMRSA検出例と感染症発症の実態を後方視的に検討する.管理分類は当院規定に従い 3 群に分類し(A群:全身感染,B群:局所感染,C群:保菌者),年齢,基礎疾患,予後,管理法,入院期間,臨床所見などについて統計解析を行う.【結果】総入院患者984名でMRSAの検出された患者件数は80件(8.1%)であった.同時期在院患者数は最大 8 名で,MRSA検出患者のいない時期はなかった.入院時MRSA陽性患者は61件(72.2%).年齢は 3 カ月以内が25件(32%)で,1 歳以内が全体の 2/3 を占めた.分類はA群 7 件,B群 4 件,C群68件,未管理 1 件であった.入院後新たな陽性化は16件(20%)で,感染症の発症した11件中MRSA感染による死亡は 1 例(壊死性気管気管支炎).発症 3 件(敗血症,心内膜炎)は単独で生じたが,8 件は陽性患者の在院者が多い時期に集中する傾向がみられた.【考察】MRSA感染発症例では致死的となる場合がある.現在,当施設では以下の予防強化対策を設け,効果について前方視的検討を行っている.(1)手術予定患者は入院前に保有の有無をチェック(咽頭,鼻腔,皮膚の培養検査).(2)不明の患者は入院時に保菌者として扱う(入院時培養検査で確認).(3)前回入院時陽性患者は確認まで保菌者として扱う.(4)手術予定はMRSAの有無を考慮して立案.(5)術後創部の発赤,発熱など感染兆候のチェック強化.(6)長期入院患者は定期的培養検査.(7)中心静脈カテーテル,動脈ラインの早期抜去.(8)保菌者の手術時予防投薬.(9)早期退院のすすめ.【結論】循環器疾患の患者の入院管理には積極的なMRSA感染予防対策が必要である.

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