P-I-E-14
7 歳時にfenestration付きTCPC術,9 歳時にfenestrationコイル閉鎖術を施行し,術後経過良好なダウン症候群の 1 例
国立循環器病センター小児科1),国立循環器病センター心臓血管外科2)
鶏内伸二1),元木倫子1),高杉尚志1),塚野真也1),八木原俊克2),越後茂之1)

【背景】二心室修復が不可能なダウン症候群児で,TCPC術(Fontan術)まで至った報告は少ない.その原因として,肺血管抵抗など肺動脈条件がTCPC術に適さない,周術期に重度の合併症を来しやすいなどの医学的理由や,染色体異常に伴う社会的理由が推測される.今回 4 歳時にTCPC術の適応なしと判断されるも,その後 7 歳時にfenestration付きTCPC術,9 歳時にfenestrationコイル閉鎖術を施行し,術後経過良好なダウン症候群の 1 例を経験したので報告する.【症例】症例は新生児期にダウン症候群,共通房室弁口,右室低形成,共通房室弁口逆流,肺高血圧と診断され,両親が外科的治療を希望されず,内科的加療のみで経過観察する方針となった.その後 4 歳時に外科的修復術を希望されたが,心臓エコー検査上肺高血圧が持続し,適応なしと判断された.しかしその後酸素飽和度が70%台前半まで低下し,心臓エコー検査上,肺動脈弁下狭窄が認められるようになった.6 歳時の心臓カテーテル検査で肺動脈平均圧22mmHg,PAI 286,肺血管抵抗2.65unit/m2,酸素負荷で肺動脈平均圧18mmHg,トラゾリン負荷で肺血管抵抗2.24unit/m2と改善を認めた.TCPC術可能と判断し 6 歳時にグレン手術・共通房室弁形成術,7 歳時にfenestration付きTCPC術を施行した.いずれも挿管期間は 1 日,カテコラミン使用期間は 5 日未満で,術後経過中に重度な合併症は認められなかった.術後 1 年目の評価で肺動脈平均圧 9mmHg,肺血管抵抗1.22unit/m2,PAI 223で,臨床的に活動性の向上,チアノーゼの改善も認めた.fenestrationバルーン閉塞試験で,酸素飽和度の改善を認め,9 歳時にfenestrationに対するコイル閉鎖術を施行した.

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