P-I-E-15
当院におけるフォンタン型手術例と未施行例の臨床的検討
兵庫県立尼崎病院心臓センター小児部1),兵庫県立尼崎病院心臓血管外科2)
若原良平1),坂崎尚徳1),槇野征一郎1),大谷成裕2),野本慎一2)

【背景】単心室循環症例において,フォンタン型(F)手術後例と未施行例を比較した報告は少ない.【方法】当院で外来経過観察されている単心室循環症例53例(男28例)を対象とした.疾患の内訳は,UVH 25例,TA 11例,DORV 8 例,cTGA 4 例,PPA 3 例等であった.手術歴の内訳は,F手術後例26例(RA-PA 7,Björk 3,TCPC 16),F手術未施行例(nonF群)27例(姑息手術24,未手術 3)であった.retrospectiveに,NYHA心機能分類,心胸郭比(%),心房調律,心房頻泊の有無,血漿BNP値,心房内臓錯位症候群の有無を調べた.さらに,18歳未満(小児群27例)と18歳以上(成人群26例)に分けて検討した.統計学的解析は,Fisher検定,t検定を用い,p < 0.05をもって有意差ありとした.【結果】(1)検査時年齢は,平均17±9.9(2~35)歳,F群の術後年数は,平均9.8±6.2(2~20)年であった.nonF群の最終姑息手術からの術後年数は平均12.6±7.9(2~30)年であった.(2)NYHA心機能分類では,1 度が21例,2 度30例,3 度 2 例であった.NYHA class 1 の占める割合は,F群58% vs nonF群22%と有意差を認めた.一方,成人群に限ると,F群54% vs nonF群35%と有意差はなく,小児群では,F群64%vs nonF群 7%と有意差を認めた.(3)心胸郭比は,F群53±1.8 vs nonF群56±1.6と差がなく,小児群と成人群でも差はなかった.(4)心房調律は,洞調律44例,pacing調律 3 例,心房細動 3 例,結節調律 2 例であった.心房頻拍例は 7 例,そのうちF群は 4 例でTCPC例はなかった.(4)血漿BNP値は,F群52±28 vs nonF群119±26(p = 0.07)で有意差はなかった.また,小児群と成人群でも有意差を認めなかった.(5)NYHA class 1 の占める割合は,心房内臓錯位症候群の有無で有意差を認めなかった.【まとめ】フォンタン型手術例では,未施行例より心機能分類の良い症例は多いが,その差は成人群より小児群で際だっていた.

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