P-I-E-16
単心室症共通房室弁逆流に対する乳児期早期弁形成術の経験
群馬県立小児医療センター心臓血管外科1),群馬大学医学部第二外科2)
鈴木政夫1),村上 淳1),行木太郎1),森下靖雄2)

【目的】共通房室弁逆流を伴う単心室症乳児例では,早期に肺血流の適正化と逆流制御が必要だが,その弁形成術は弁尖の脆弱性や形態の多様性から容易ではない.今回われわれは,二弁口化の後一側弁口閉鎖を行い良好な結果を得たので報告する.【症例】生後 3 カ月,体重4.5kg,男児.診断は,asplenia,{I,D,D}TGA,severe CAVVR,hypo-LV,PS,TAPVR,RSVC,levocardia.日齢 2 に哺乳力低下と心雑音を指摘され心疾患疑いにて当院紹介入院となった.入院時軽度チアノーゼを認め,胸骨左縁第二肋間および第四肋間にLevine 3 度の収縮期雑音を聴取した.胸部X-pでは肺血管影は乏しくCTR50%で,心エコー検査にて上記診断し内科的管理を開始した.日齢46での心臓カテーテル造影検査ではPA index 244mm2/m2で,CAVVRはmoderateであった.生後 3 カ月頃よりCAVVRが増悪しCTRも71%と心不全が進行したため手術となった.【手術】体外循環の確立後心停止し,右側心房切開にて心内に至った.CAVVは 6 尖弁で逆流は中央に見られた.自己心膜ストリップにより心室中隔上で二弁口化し左右のcleft縫合を行った.右側AVVで逆流はほぼ消失したが,左側AVVでは逆流が残存したため弁口閉鎖とした.中央の自己心膜ストリップと左側弁輪とを縫合し,たわみとして残った弁輪を直接縫合閉鎖した.さらに両方向性Glenn shuntと肺動脈絞扼を行った.【結果】術後直後の心エコーでAVVRはmildで収縮能も改善し,CTRも61%となった.術後13カ月でもAVVRはmild,CTRは51%で,現在staged TCPC待機中である.【まとめ】単心室症乳児例での共通房室弁逆流に対する弁形成術として二弁口化は有用である.また一側に逆流が残存した場合,心室収縮にロスが生じ難いように弁閉鎖することで良好な術後心機能を維持できるものと思われた.

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