P-I-E-17
著明な低形成肺動脈を有した三尖弁閉鎖症に対する治療戦略
横浜市立大学医学部第一外科1),横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター小児科2)
磯松幸尚1),高梨吉則1),寺田正次1),飛川浩治1),国井佳文1),岩本眞理2),瀧聞浄宏2),西澤 崇2),赤池 徹2)

著明な低形成および複雑な走行を有する肺動脈,右側大動脈弓(RAA)を合併した三尖弁閉鎖(TA)を経験した.治療戦略についてご教示頂きたく,ここに報告する.【症例】1 歳,男児.在胎37週 3 日に緊急帝王切開にて出生,2,040gr,Apgar 8/8.上記診断された後,生後 5 日からリプルを開始したがPDAの開存は得られず.しかしアシドーシスなくSpO2 60~65%を維持.生後48日目に施行した心臓カテーテル検査では左肺静脈逆行性造影により痕跡的に左肺動脈が造影された.第 1 回手術:生後55日に体外循環・心拍動下に自己心膜を用いた右室流出路─肺動脈パッチ形成術を行った.術中計測では主肺動脈径は 5mm,左肺動脈径1.8mm,右肺動脈径0.5mm.術後 5 日目に気管内チューブを抜去し,29日目に退院した.第 2 回手術:7 カ月時(体重5.5kg)に施行した心臓カテーテル検査では左肺動脈径3.7mm,右肺動脈径4.7mm,PA index 97.体外循環スタンバイとして,8 カ月時に第 2 回手術を施行.再胸骨正中切開後,左肺動脈は単純遮断可能であった.RAAの第 1 分枝である左総頸動脈と右肺動脈を 4mm PTFEグラフトを用いてBlalock-Taussig(BT)短絡を行った.術後 3 日目に気管内チューブを抜去.第 3 回手術:13カ月目の外来においてチアノーゼ増強を認めたため(SpO2 56~65%)心臓カテーテル検査施行(体重6.3kg).右BTは良好な血流を認めたが,左肺動脈径3.8mm,右肺動脈径5.4mm,PA index 98.15カ月時に第 3 回手術を左側方開胸にて行った.aberrant left subclavian arteryと左肺動脈を 4mm PTFEグラフトを用いてBT短絡施行.同手術後 2 日目に突然の心停止のために失った.【論点】(1)第 3 回手術としてleft BT shunt以外の術式を選ぶべきか.第 3 回手術としてBDGはoptionとなりうるか.(2)背側から大動脈に圧排されているために肺動脈の発育が得られないとするならば,大動脈を前方にtranslocationする術式も考えられるか.考えられるならばいつの時点で行うべきか.

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