P-I-E-18
治療選択に難渋した単心房,単心室,単肺,総肺静脈還流異常,肺静脈閉鎖を合併した無脾症候群の 1 例
大垣市民病院胸部外科
六鹿雅登,玉木修治,横山幸房,横手 淳,大畑賀央,鈴木登士彦,中島正彌

治療選択に難渋した単心房,単心室,単肺,総肺静脈還流異常,肺静脈閉鎖を合併した無脾症候群のまれな 1 例を当院で経験したので報告する.症例は,1 歳,男児.生後 1 カ月で右のmodified BT shunt(3.5mm)+ PV rerouting手術を施行した.術後早期のLOSおよび急激な肺血流の変化に対し,pulmonary low resistance strategyにより耐術しえた.生後 8 カ月に心臓カテーテル検査を施行し,片肺であるがPAI 297,RpI 3.47,Qp/Qs 0.68,SpO2 72%の所見を得た.右上肺静脈と心房間に圧較差 4mmHgと軽度の肺静脈閉鎖房室弁逆流I度を認めた.生後11カ月でGlenn + 肺静脈閉鎖解除手術を施行した.一時期NOを使用したが,術後 3 日目に呼吸器離脱可能と判断し,抜管するも高CO2血症のため再挿管を施行した.以後高CO2血症は改善しないため,術後 4 週間に心臓カテーテル検査を試行し,RpI 2.9,Qp/Qs 0.42,上大静脈から下大静脈へのV-V shuntの所見を得た.治療選択として,(1)V-V shuntの閉鎖,およびmodified BT shuntへのtake down,(2)fenestrated TCPCへのtake upを考え,RpIは高値であるが(2)を選択した.1 歳時にfenestrated TCPC(PTFE 16mm)を施行した.ところがfenestrationを閉鎖した状態でもCVP 15cmH2Oで体外循環からの離脱が可能であった.胸骨閉鎖に伴うPVの圧迫による血行動態の悪化を認め,術後 4 日目に体外循環下にPV圧迫部位のみ14mmを介在させる手術を追加した.肺出血のためV-A bypassで補助を施行.肺がARDS様の変化を認め悪化した.術後 2 週間でV-V bypassとなるも改善をみることなく,全身状態の悪化を認め死亡した.本症例は文献上でも報告例を認めず,問題点として,PVOを伴う症例でGlenn手術が妥当であったか,その後のfenestrated TCPCの選択は良かったのか,片肺での手術適応など問題点が多く,広く意見を聞くため症例を呈示した.

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