P-I-E-19
Fontan型手術後急性期の血漿BNP値と短期予後との関連
千葉県こども病院循環器科1),千葉県こども病院心臓血管外科2)
池田弘之1),青墳裕之1),中島弘道1),澤田まどか1),石橋信之2),渡辺 学2),青木 満2),藤原 直2)

【背景と目的】先天性心疾患術後の血漿BNP値と予後の関係を検討した報告は少ないが,今回特にFontan型手術後症例を対象に,手術後 1 カ月前後の血漿BNP値と術後早期の有害事象との関連を検討した.【方法と対象】対象はFontan型手術後症例14例(男児10例,女児 4 例).診断は三尖弁閉鎖 5 例,無脾症候群 7 例,多脾症候群 2 例であった.Fontan型手術の術式は全例lateral tunnelで,うち 1 例でFenestrationを併用した.Fontan型手術時年齢は 2~6 歳(中央値3.9歳).Fontan型手術から血漿BNP測定までの期間は16~79日(平均37±20日,中央値31日).有害事象は,術後死亡,2 カ月以上の長期入院,心不全の増悪による再入院,術後 1 カ月以降の新規不整脈の発生と定義した.術後観察期間は 3 カ月~1 年10カ月.また,血漿BNP値とカテーテル検査(血漿BNP測定とカテーテル検査の間隔は平均52±60日,中央値37日)によるEF,EDV%Nとの関連を調べた.【結果】有害事象は 3 例にみられた.内訳は,発作性上室性頻拍 2 例(術後 9 カ月および 7 カ月,抗不整脈薬内服開始),心不全に増悪による再入院 1 例(術後 5 カ月,take downしGlennへ)であった.これらの症例の血漿BNP値は順に,166.9,229.3,278.2pg/ml.有害事象のみられなかった11例の血漿BNP値は16.3~113.8pg/ml(平均53±33,中央値41.5pg/ml)で,有害事象群との間に有意差(p = 0.0055)を認めた.また,血漿BNP値はカテーテル検査によるEFと有意な相関(r = -0.70,p = 0.0053)を示した.血漿BNP値とEDV%Nの間には有意な相関を認めなかった.【結論】Fontan型手術後症例において術後 1 カ月前後の血漿BNP値は術後 1 年ごろまでの短期予後の推測に有用である可能性がある.

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