P-I-F-1
動脈スイッチ手術20例の成績
横浜市立大学医学部第一外科1),横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター小児科2),北海道立小児総合保健センター小児科3)
寺田正次1),高梨吉則1),磯松幸尚1),飛川浩治1),国井佳文1),岩本眞理2),瀧聞浄宏2),西澤 崇2),赤池 徹2),横沢正人3)

【目的】完全大血管転位症(d-TGA)あるいは両大血管右室起始症(DORV)に対する動脈スイッチ手術における冠動脈移植法と肺動脈再建方法について検討した.【方法】2000年9月~2003年10月までの約 3 年間の,4 人の執刀医による動脈スイッチ手術連続20例(男児12例,女児 8 例,日齢11日~1 歳,新生児11例)を対象とした.手術時体重は2.5~10.6kg(3.0kg未満 6 例).d-TGA 16例(I 型 9 例,II型 7 例),DORV 4 例.二期的手術 3 例.冠動脈起始走行パターンはShaher分類 1 型11例(LCA高位起始,RCA壁内走行各 1 例含む),2A型 3 例,3A型 1 例,4 亜型 1 例,5A型 1 例,5A亜型 1 例,7B型 2 例.18例にLeCompte法,左冠動脈壁内走行のd-TGA II型 2 例に今井法施行.冠動脈移植は冠動脈ボタンを肺動脈近位部の縦切開口に移植する方法を基本とし,trap door法は 2 例(2A型と7B型の各 1 例)のみに採用した.肺動脈再建は 6 例にPacifico法,12例で冠動脈欠損部の新鮮自家心膜補填を行った.右側大動脈弓,高度大動脈縮窄症を伴うDORVに保存心膜ロールによる大動脈再建を同時に行った.【結果】手術死亡 0,遠隔死亡 0.術後カテーテル検査を施行した14例中,冠動脈狭窄病変を認めた症例はなかったが,8 例(57%)に肺動脈分岐部の有意狭窄病変(左側 6 例,両側 2 例)を認めた.拡張変形した新大動脈洞や肺動脈再建用自家心膜の瘤状拡張,肺動脈分枝の過度の緊張などが狭窄原因と考えられた.7 例にPTA(4 例は術後 6 カ月以内)を施行し,ほぼ満足できる拡張が得られた.【結論】われわれの行ってきた冠動脈移植法は簡便であり今後も基本術式とする.術後肺動脈狭窄予防には症例に応じた再建術式の選択,新大動脈洞による肺動脈圧迫軽減の工夫などが今後の課題である.

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