P-I-F-2
当院における完全大血管転位症に対するJatene手術14例の検討
沖縄県立中部病院小児科
我那覇仁

【背景】沖縄県立中部病院において1986~2003年の18年間に小児心臓手術は696例である.完全大血管転位症(TGA)は新生児期に早急に治療を必要とする心疾患であるが,沖縄県では1998年まで根治手術は困難であり本土医療機関に搬送されていた.【目的】TGA手術例について,診断,治療成績,合併症等を検討する.【対象】当院では最初のJatene手術は1988年に行われ現在まで14例経験した.病型ではType 1 は10例,Type 2 は 4 例で,1 例は大動脈弓離断症を伴い,他の 1 例は先天性横隔膜ヘルニアを合併していた.PGE1は11例に投与され,BASは 7 例(1 例はエコー下)に行った.診断は全例心エコーで行い,心臓カテーテルは 9 例に冠動脈の評価やBASの目的で施行した.【成績】術式はJatene手術とLecompte変法等を併用した.14例のうち生存は10例,死亡は 4 例だった.1988~1996年までの 4 例は救命することができず,1998年以降の10例はすべて救命できた.手術時年齢は生後 2 日~12カ月で,出生体重2.2kgの 1 例は新生児期にBASを行い,12カ月にrapid two stage repairでJatene手術が行えた.先天性横隔膜ヘルニアの 1 例は生後 2 日でヘルニアの修復を行い,生後 8 日でJatene手術を行った.手術時体重は2.4~7.4kgで新生児期の症例は平均体重2.9kgである.生存例の最小年齢は生後 2 日で,最小体重は2.5kgだった.開胸してICUに帰室した症例は 9 例(生存例では10例中 8 例)で,術後腎不全のためCAPDを施行したのは 6 例だった.また 1 例はPCPSを行い救命できた.心房性不整脈は 3 例に見られた.【結果】最近の治療成績の向上の要因として術式の改善,血行動態に応じた開胸での帰室,CAPD,PCPSの導入,ICUでの栄養を含めた術後管理等が挙げられる.かつて沖縄県ではTGAは手術のため本土医療施設へ搬送されていたが,現在では本県において新生児期のJatene手術が行えるようになった.

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