P-I-F-6
僧帽弁形成術を要するJatene手術の遠隔成績
東京女子医科大学心臓血管外科
坂本貴彦,丁 毅文,新岡俊治,長津正芳,森嶋克昌,小坂由道,松村剛毅,山本 昇,小沼武司,黒澤博身

【目的】われわれは僧帽弁奇形を合併した複雑心奇形に対して積極的に僧帽弁形成術とBiventricular repairを同時施行してきた.今回,僧帽弁形成術とJatene手術を同時施行した症例の遠隔成績について検討を加えた.【対象】対象は1991年 7 月から2002年 9 月までの間に僧帽弁形成術とJatene手術を同時施行した12例で,手術時年齢は12日から 3 歳,平均1.6歳.両大血管右室起始症(DORV)7 例,完全大血管転換症(TGA)4 例,単心室症(SV)1 例であった.僧帽弁奇形は前尖の裂隙(cleft)3 例,cleftと僧帽弁両心室挿入(str)の合併 5 例,accessory mitral valve tissue(amt)1 例,cleftとamtの合併 2 例,str,cleft,amtの合併 1 例であった.strはTabry分類のA型 1 例,B型 3 例,C型 2 例であった.術前の僧帽弁逆流(MR)はmoderate 2 例,mild 7 例,trivial 2 例,none 1 例であり,12例中 8 例が先行手術として肺動脈絞扼術を受けていた.手術はstrに対しては僧帽弁の前および後乳頭筋とその腱索を確認して,cleftを支持するstraddling chordaeをすべて切除した.cleftは短冊状の自己心膜を用いて閉鎖した.また生後12日目のTGAのcleft,amt合併例には弁輪縫縮術のみを行い,他のamtはすべて切除し 3 例でVSD拡大を施行した.SVに対してはventricular septationを行った.【結果】cleft群のDORV 1 例,str群のSV 1 例,DORV 1 例に術後MRの増強を認めたため僧帽弁置換術(MVR)を施行した.前者 2 例を初回手術後それぞれ38日,159日後にLOSにて失った.術後MRの原因は,後尖支持組織の低形成とcleft縫合部の裂開であり,straddling chordaeの切離によるものはなかった.他の 9 例は術後有意なMRを認めず,遠隔期には心係数4.5±0.5l/min/m2,心胸郭比53.6±8.6%,4 例がmedication freeであった.【結語】僧帽弁形成術を要するJatene手術の遠隔成績は良好であった.str合併例ではcleftを支持するstraddling chordaeを切離し弁形成術を加えることで,自己弁の機能を保ちえた.

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