P-I-F-8
Sinusoidal communicationを合併した純型肺動脈閉鎖症(PA/IVS)に対してoff-pump Fontan手術を施行した 5 例の検討
国立循環器病センター心臓血管外科
綿貫博隆,八木原俊克,上村秀樹,鍵崎康治,萩野生男,康 雅博,北村惣一郎

Sinusoidal communication(SC)を合併した純型肺動脈閉鎖症(PA/IVS)の外科治療において,人工心肺の使用は右室圧の減圧を来すため,心筋虚血が問題となることがある.1995年以降,われわれはoff-pump Fontanを導入しているが,SCを合併したPA/IVSの 5 例に対しoff-pump Fontanを施行し,術中,術後を通じて心筋虚血の合併症が起こることなく良好に経過したので,その短期成績を報告する.【対象と方法】SCを有するPA/IVSの 5 症例にoff-pump Fontan手術を施行した.5 例中 2 例にtemporary bypass(IVC-RA)を使用した.手術時年齢は 1 歳,2 歳,3 歳 2 例,10歳で,先行手術としては,すべての症例において体肺動脈短絡術を施行し,bidirectional Glenn手術[on pump 3 例,temporary bypass(SVC-RA)1 例]を 4 例に施行した.SCはLCA-RV間,RCA-RV間もしくは両方に認め,SC径は1.8~6.8mmであった.1 例に右冠動脈の狭窄を認めたが,他の 4 例には冠動脈の明らかな狭窄は認めなかった.【結果】冠動脈に狭窄を認めた 1 例を含め,いずれの症例においても術中および術後急性期に心筋虚血と思われる心電図変化(ST-T変化)や心筋逸脱酵素の著明な上昇は認められなかった.術後経過観察期間は 1 カ月から 3 年 4 カ月である.退院前と術後 1 年以上経過している 3 例においては 1 年後に心臓カテーテル検査および心筋シンチを施行している.カテーテル検査ではSCの形態はいずれも術前と不変であった.また,心筋シンチにおいては虚血変化を示す所見はいずれも認められなかった.【まとめ】SCを合併した純型肺動脈閉鎖症(PA/IVS)に対してoff-pump Fontan手術を施行し,良好な結果を得ることができた.人工心肺を用いずに行う本法は本疾患で懸念される右室圧の減圧による心筋虚血を避けることができるため有用であると思われた.

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