P-I-F-10
ファロー四徴修復術後中期遠隔期成績の検討―肺血管床の重要性―
大阪市立総合医療センター小児心臓血管外科1),大阪市立総合医療センター小児循環器内科2)
上野高義1),西垣恭一1),久米庸一1),関谷直純1),村上洋介2),杉本久和2),江原英治2),兪 幸秀2)

ファロー四徴(TF)もしくはTF + 肺動脈閉鎖(TF/PA)術後遠隔期において,肺動脈弁逆流(PR)や右室機能不全によるQOL低下が指摘されている.われわれは,肺動脈(PA)が細く,心内修復術borderlineの症例に対しては,積極的に姑息手術やPA再建を行い,肺血管床を成長させ心内修復術を施行する方針としており,その中期遠隔期成績を検討した.【対象】1996年から現在まで,心内修復術後心臓カテーテル検査(心カテ)を行った,MAPCA合併例を除くTF,TF/PAの47例(TF:37例,TF/PA:10例).姑息術を31例(両側BT:8 例,片側BT:22例,バルーンPA弁裂開 2 例)に行い,TF修復術前のPAI:312±99(meanwSD)mm2/m2,LVEDV:正常比129±37%であった.修復術時年齢はTF:2.0(median 1.6)歳,TF/PA:3.3(median 3.0)歳で,右室流出路再建法はtransannular patch:32例,Rastelli型手術:3 例,弁輪温存:12例であった.これら症例に対し,術後1.3±0.6年で心カテを行い,また術後5.4±1.7年の中期遠隔期成績を検討した.【術後心カテ】PAの圧較差は,PA trunk,左右PAでそれぞれ 9±7.8,20±16,13±11mmHgで,RV/LV比:0.47±0.14であった.3 度以上のPRを認めたのは11例(23.4%)で,RVEDV:正常比126±29%,RVEF:52.8±7.9%,RVEDP:8.0±2.0mmHgと右室機能は良好であった.【遠隔期】遠隔期死亡はなかった.遺残病変(PS,residual VSD)に対する治療は12例(25.5%,術後2.7±2.1年)に行い,event free ratioは 3 年で93.1%,5 年で87.9%であった.現在,全例NYHA 1 度で,投薬例は16例(利尿剤11例,強心剤 5 例,抗不整脈剤 1 例,その他 3 例),胸部Xp上CTRは56.6±4.8%と著明な心拡大を認めず,心エコー上 3 度以上のPRを認めたのは 7 例(14.9%)で良好な成績であった.【まとめ】TFおよびTF/PAに対し,積極的に姑息術を行い,肺血管床を広げ心内修復術を行い,良好な中期遠隔期成績が得られた.

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